解説
用語
特徴、背景
史料は、明治時代に作成された、冬衣を売り出す小川錦町 中井屋商店というお店の引札(広告)。広告にして、江戸時代の証文の様式(表題、本文、差出人・宛名)で書かれているのが特徴です。
江戸は京より遅れて誕生し、身の廻りの品々から酒や菓子までが京坂下り、すなわち「下り物」(くだりもの)が上等。また上方商人は争って江戸に支店を設けました。下り物の中で最も利益が大きい商品が衣料。
三井越後屋
呉服店(ごふくだな)の代表が三井越後屋(駿河町)、現在の三越です。創始者・三井高利(たかとし)は伊勢松坂の出身で、延宝一(1673)、京都に呉服の仕入店(しいれだな)を設け、江戸店(えどだな)を本町二丁目に開きました。
史料「正札附掛直なし」とはつまり、駆け引きをせずに、予め売り手が設定した正当な価格で販売するという意味。現在の小売業では当たり前の販売方法ですが、世界で初めて越後屋呉服店がこの正札販売を導入。
この新商法は大当たりしましたが、呉服仲間の反感を買い、天和三年(1683)駿河町に移転しました。
補註
- 花咲一男(監修)「呉服屋」『大江戸ものしり図鑑』(主婦と生活社、2000年)114-115頁
- 「三井越後屋江戸本店」『模型でみる江戸・東京の世界』(東京都江戸東京博物館、1997年)36-37頁
- 鐘井輝『わが国における革新的小売業の源流』[PDF](関西実践経営・第16号、1998年10月)
史料情報
- 表題:冬衣売出し広告(印刷)
- 年代:明治 .12.21/出所:小川錦町中井屋商店、宛所:御得意様
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書5619
- 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
- ※無断転載を禁止します。