くずし字で楽しむ江戸時代

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看板・扁額

お寺の額(扁額・へんがく)のくずし字その1 京都広隆寺

お寺に掲げられている横に長い額は、看板の一種で、扁額(へんがく)と言います。京都にある、聖徳太子信仰のお寺・広隆寺の扁額に、くずし字を発見したので解読してみましょう。

問一

お寺の額(扁額・へんがく)その1

和国教主

和国教主とは、親鸞聖人が聖徳太子を和国の教主(一宗一派の創始者。また、代表者)と深く讃えたことから、聖徳太子のことを指します[1]。教と主は当てもつきづらく難読。

問二

お寺の額(扁額・へんがく)その2

大悲救世

これをスラスラ読んでしまった方は、感じわるー。(笑)

悲は理屈的には非と心の組み合わせ――ですが非がひどくくずされて非常に難読。また一般的にくずし字で救は求が木編のようになり、世は仮名「を」のように記号化します。然しながらこれらは古文書頻出文字であるため、学習者にとっては有り難い?額かではあります。

大悲(だいひ)とは、仏語で衆生の苦しみを救う仏・菩薩の大きな慈悲の意味があり、また観世音菩薩の別名。救世(きゅうせい)とは、宗教の力でこの世の苦しみや罪悪から人々を救うことの意味。また親鸞聖人は聖徳太子のことを、大悲救世観音とも讃えていました[2]。

問三

お寺の額(扁額・へんがく)その3

以和為貴

以と和、為と貴の間に返り点を打って(以レ和為レ貴)、和を以(も)って貴(とうと)しとなし。

為は尊に、貴は美に似ていることもあり、問二に続いてこちらも難読。

これは聖徳太子が定めた有名な「十七条の憲法」第一条。その出典は『論語』学而12「の用(はたらき)は、和を貴しと為す」。和を知って和を敢行するといえど、礼をもってけじめをつけないとうまくいかないことを説いています。

広隆寺は、国宝第一号でお馴染みの弥勒菩薩が安置されています。同寺の扁額のくずし字を解読することで、同寺には聖徳太子にまつわる言葉が散りばめられていたことがわかりました。

補註

  1. 和国の教主 聖徳王(1)_瑞興寺 参照のこと。
  2. 救世観音(2)_瑞興寺 参照のこと。

看板・扁額

1.鎌倉編 蕎麦屋 2.和食屋 和菓子店 3.薬局、旅館 4.川越編

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8.秩父 金昌寺・9.江戸時代の女性の名前

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