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伊勢暦2

暦師、年号、干支など伊勢暦冒頭の解読

史料

伊勢暦_タイトル

※無断転載禁止

解読文(史料青枠)

伊勢度会郡山田・山口右兵衛/文久二年みつのえいぬ乃天保壬寅元暦 角宿値年 凡三百八十四日

用語

表題(地名と暦師)

  • 伊勢 度会郡(わたらいぐん)山田(やまだ):三重県伊勢市。山田は伊勢神宮(外宮)の門前町。伊勢神宮の御師(おし,おんし)は暦の配布をし、中世以降商人化する者多く、宝暦五年(1755)には573人いたという。
  • 山口右兵衛(やまぐちうべえ):暦師(れきし:暦を作った人)。

副題(年)

  • 文久二年:1862年。江戸末期孝明天皇朝。
  • みつのえいぬ(壬戌):干支十干+十二支)。
  • 天保壬寅元暦:江戸幕府が施行した日本最後の太陰暦。天保一三(1842)壬寅に寛政暦から改められ、弘化元年(1844)から明治五年(1872)に太陽暦が採用されるまで使われた。
  • 角宿値年(すぼし としにあう):この年の二十八宿が角宿にあたる。
  • 凡(およそ)三百八十四日:この年の総日数。

解説

伊勢暦の冒頭、暦首(れきしゅ)には、その年に関する記載があります。

現代のカレンダーと書かれていることが全く異なっているので、くずし字が読めても知識がないと意味がわからないと思います。

然しながら暦本(れきほん:暦に関する書物)に書かれていることは決まっているので、ルールさえ覚えれば見た目ほど難しくありません。また暦本を解読することで、江戸時代の人々がどれほど五行とか占い中心の生活を送っていたか直観できるはずです。

それでは史料青枠を解読してみましょう。冒頭は出版地と暦師。史料は地方暦の一で、出版地が伊勢なので伊勢暦。二行目が最重要箇所で、ここを見れば"何年の暦か"がわかります。読みづらかった方は日付の解読も併せてご参考ください。

参考文献

  • 伊東和彦「第三章 暦の内容」『暦を知る事典』(東京堂出版、2006年)86-87頁。岡田芳朗「暦を読む」196頁の伊勢暦(文政十年)史料の暦師も「山口右兵衛」だが、203頁解読文に「山口右衛門」とあり、誤植であろう。
  • 「度会郡」『角川日本地名大辞典24 三重県』(角川書店、1983年)1129-1133頁

史料情報

  • 表題:伊勢暦 天保壬寅元暦 文久2年
  • 暦師:山口右兵衛/形態:折本
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家4031
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
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伊勢暦

概要/表題:暦師 年号 干支、シンボル:三鏡宝珠形

上段:八将神、中央:歳徳神金神、下段:土公神大小

月建:月の干支二十八宿と七曜正月行事十二直

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