くずし字で楽しむ江戸時代の暮らしと文化

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旅行用心集その9

夏に気をつける食べ物

史料

夏に気をつける食べ物1

※無断転載禁止

解読文

一 旅行(りかう)は、兎角(とかく)暑寒(しよかん)をよく凌(しのく)べきなり、就中(なかんづく)、夏(なつ)を心付へし

先(それ)暑中(しよちう)は、人々の脾胃(ひゐ)ゆるみて、食物(しよくもつ)を消化(せうくわ)しがたし。

因而(よつて)しらぬ魚(うを)、鳥(とり)、貝類(かいるい)、筍(たけのこ)、菌(きのこ)、瓜(うり)、西瓜(すいくわ)、餅(もち)、強飯(こはめし)の類(るい)多(おほ)く喰(くら)ふべからず

夏(なつ)は食傷(しよくしやう)より、寉乱(くわくらん)に発(はつ)し、難義(なんぎ)に及ふことあり、春(はる)秋(あき)冬(ふゆ)は、夏(なつ)に準(しゆん)じ知べし

清輔 ゆくまゝに、花の梢となりにけり、よそに見へつる、峯のしら雲

現代語訳

旅行中は兎角、暑さと寒さをよくしのぐこと。とりわけ夏は注意すること。夏の暑い時期は、人々の胃腸がゆるんで、食物を消化しがたい。

よって、知らない魚や鳥や貝類、筍、きのこ、瓜、スイカ、餅、赤飯のたぐいは多く食べてはいけない。

夏は食あたりにより、吐き気や下痢などを発し、難儀に及ぶことがる。春秋冬は、夏に準じて対処すること。

清輔[註1] 遠くから見ていた時は峯の白雲が残っていたのに、旅の日数を重ねるに連れて、一面花ざかりとなってしまった

現代語訳

暑寒(しょうかん):暑さと寒さ。寒暑。

脾胃(ひい):脾臓(胃の左側にあるリンパ系の臓器)と胃腸。消化器系の内臓。はら。

強飯(こわめし):もちごめ蒸した飯。ふつう、小豆やササゲを入れて赤飯にする。おこわ

食傷(しょくしょう):食あたりを起こすこと。

寉乱(かくらん):夏に起きやすい、激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気

このくずし字に注目

旅行 就中
旅行 就中
りょこう なかんづく
「旅」が慣れないとなかなか解読しづらい、くずし方をしています。 「とりわけ」の意味。聴きなれない言葉ですが古文書頻出用語です。
鳥 夏 冬
動物の名前の所に掲載した鳥と同じくずし方をしています。 これが「夏」のくずし字の典型です。「度」にも見え、非常に難読です。 「夏」とセットで覚えておくとよいです。

解説

史料は旅行用心集・道中用心六十一ヶ条の第七条に当たります。旅行中、それが夏だった場合、食べてはいけないものを細かく挙げていますが、江戸時代の食文化が同時に伝わってきます。

江戸時代の人々も夏はスイカ、食べていたんだなと。でも夏の旅行中はお腹をこわしやすいので余り食べるなと言ってます。

  

補註

註1:藤原清輔(ふじわらのきよすけ)[1104~1177]平安後期の歌人・歌学者。顕輔(あきすけ)の子。六条家の中心人物で、俊成と並び称された。二条天皇の命で、「続詞花集」を撰。著「奥義抄」「袋草紙」、家集「清輔朝臣集」など

史料情報

  • 表題:旅行用心集
  • 年代:文化 7(1869)/出所:八隅芦庵/宛所:須原屋伊八外/形態:竪帳
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3361
  • 当サイトは埼玉県立文書館から掲載許可を頂いてます。
  • ※無断転載を禁止します。

旅行用心集

1.旅行用心集とは/2.東海道、木曽路Ⅰ/3.東海道、木曽路Ⅱ/4.旅の前日

5.持ち物について/6.宿の確認事項/7.毒虫にはご用心/8.馬、駕籠などの手配

9.夏の食べ物/10.ソリの種類/11.雪かきの道具/12.頭巾や帽子

13.履き物その1/14.履き物その2/15.白澤の図/16.旧国名・日本地図

17.足のツボ/18.旅行用バッグ/19.旅行の持ち物/20.日記の書き方/21.天気予報

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