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植学啓原5

ツクバネ、水仙の構造など

江戸時代の植物図鑑を通して、ツクバネ、水仙などの構造を紐解きます。

史料

ツクバネ、水仙_植学啓原

※無断転載禁止

解読文および解説

第七図:落葉低木

○都苦抜涅(ツクハネ/カレーロプレリス ヨウアン)

衝羽根(つくばね)。ビャクダン科の落葉低木。日本各地の山地に生え、初夏に淡緑色の小花が開く。下方にあるに四個の包葉が、果実のときに8~10cmに生長して羽子板の羽根に似る。

カレーロプレリス・ヨウアンの名は、発見者の榕菴(本書作者)に敬意を払いシーボルトが付けたという[]。ツクバネのネは子をくずした変体カタカナ。

  • 実、萼

○鐘空木、又小都苦抜涅(ツクツバネ)ト名ク。

衝羽根空木(つくばね うつぎ)。スイカズラ科の落葉低木。本州~九州の山地に生える。五月頃、黄白色の筒状の鐘形で、先は五裂する。花後も残存して羽子板の羽根に似る。

  • 心蕊(しべ)、萼/唇花/蜜腺、筒子、四髯蕊長短有
  • 花頭単弁歪邪:花びらはひとえで歪んで曲がる。(辨は弁の旧字)、上唇、下唇

第八図:水仙

○水仙(ナルシス)

すいせん、narcissus。ヒガンバナ科の多年草。中国から日本に伝わる。正月の花と賞され、一月~二月頃、直立する花茎を伸ばして、数個の花を横向きにつける。白色の六弁花は平開し、下部は長い筒状になる。

  • 蜜槽(みつそう,花蜜を分泌する蜜腺)、卵巣、花梗(かこう,花柄)、苞(ほう,花の基部につく葉)、葶、筒子
  • 蜜槽金盞ヲ作ス者テ剖ク:蜜槽は金の盃(器)を作るもので割いた(図)。
  • 蜜槽弁に化シ而重弁為ス:蜜槽は花びらに化して、花びらが重なっている。(為は爲の旧字)
  • 蜜槽弁に化シ葯于槽ニ著ク:蜜槽は花びらに化して(花粉が生じる)葯(ヤク)は槽を著す。
  • 三髭茼子裏面二在リ、心盞、卵巣

補註

洋学資料館No.5_2011.9月号_津山洋学資料館:http://suyama-yougaku.jp/asset/00032/kikansi/05.pdf

史料情報

  • 表題:植学啓原 3巻合綴
  • 年代:天保5(1834)/宇田川榕庵著、菩薩樓蔵版
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3954
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
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植学啓原

1.宇田川榕庵 著 2.根や球根 3.根の断面、シダ 4.コケやキノコ

5.ツクバネ、水仙 6.御前橘、露草 7.外国の花 8.蘭や菫

9.マメ、キク科 10.リンネ二四綱 11.花粉

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