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証文・手形など

証文・手形類の読み方 闕字、改ざん防止など

史料

通行手形

※無断転載禁止

解説

証文とは、後々の証明とする文書。手形・一札とも言い、文で書かれています。史料は通行手形で解読文は左記リンク先を、読み方のルールなどについては下記ご参照ください。

表題

古文書(証文・手形類)において表題は、一番右に本文と同じか大きく書かれています。

史料表題は、差上申一札之事。意味は、一通の文書を提出して申し上げます。同様の表題に変死体の処理の証文。また(おぼえ)、乍恐以書付奉願上候などもよくある表題。則ち江戸時代の証文において表題で、書いてある内容まで特定することはほぼ不可能です[1]。

本文

一つ書(ひとつがき)

候文では本文冒頭に漢数字の「一」が書かれている場合が多々あり、「ひとつ」と読みます。五人組の掟法度など一条、二条、三条…と続く場合も連番にせず、いずれの条項も漢数字の「一」を振ります。

さて現代で、よくある細かすぎる規約を律儀に読む人は稀かと思います。あまつさえ江戸時代はテレビやラジオもないので、掟や法度は名主などが村民に「読み聞かせ」ます。歴史的に見ても上代の詔(みことのり:天子の命令)もただ書いただけでなく、読み聞かせるものでありました。

改ざん防止

史料二行目「男五人」の五の上に印鑑が押してありますが、数字の改ざん防止のためです。また解読文を作成する場合は、五(数字)の横に忘れずに書きましょう。

闕字

闕字(けつじ)は、文中にある尊敬すべき語があるとき、これを並みに続け書きにすることは失礼なので、一、二字おいて書きます。史料四行目「関所」と「遊」の上の余白がこれにあたります。

平出、台頭

平出(へいしゅつ)は、同様の理由で行を変える、台頭(たいとう)は平出でも物足らないという考えから一段上に出す書き方です。

読み方

くずし字の覚え方でも書きましたが、主語は省略されているので、自分で考えて補わないと意味が通じない場合が多いです。また本史料三行目候間(そうろうあいだ)は"~ので"、五行目の可被下候(くださるべく そうろう)は"ください"の意味で、漢文とも違う独特な表現法で、慣れないと活字(楷書)でも読みづらいです。

文末

依而如件(よってくだんのごとし)は、文章を結ぶ際の決まり文句。"そこで前記の通りです"の意です。

日付

日付は、本文の後ろや文末の宛名(宛所:あてどころ)の前にあります。くずし字の覚え方にも書きましたが、古文書を手にしたら、その文書の所蔵元の確認の次に日付を解読します。解読方法は十干十二支または閏月の頁を参照のこと。

差出人・宛名

江戸時代の証文・手形類は、宛名が一番最後で、差出人は宛名の前にあります。また差出人(差出書:さしだしがき)の位置は概ね、日付の下ないし日付の左下あたりにあります[2]。

史料の場合、差出人の名主より、宛名の箱根御関所の御役人衆中の方が「身分が」上なので、字体を大きくまた丁寧に書きます。宛名だから大きく書いているのではないことに注意しましょう。

補註

  1. 平安時代に誕生した、準公式文書・御教書(みぎょうしょ)には表題がない。けだし今ではすっかり知人に封書で手紙を書くこともなくなったが、その場合、表題は書かない――ことを思い出されたい。
  2. 古文書の様式は、時代あるいは種類などによって異なる。

参考文献

  1. 伊木壽一『日本古文書学』(雄山閣出版、第三版1990年)「平出闕字式_第十三章 様式」258-260「宣命_第十四章 古文書の種類」278頁
  2. 林英夫 監修『音訓引き 古文書字』(柏書房、2004年)

史料情報

  • 表題:差上申一札之事(箱根関男五人御通行ニ付)
  • 年代:嘉永4.極.19
  • 出所:名主・平重郎、宛所:箱根関所役人衆中
  • 埼玉県立文書館所蔵 飯島家549
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