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女大学その2

江戸時代の安産の秘訣その2 マタニティケア

江戸時代の教科書『女大学』から安産の秘訣として、マタニティケアについて見ていきます。

史料

女大学_江戸時代の安産の秘訣その2

※無断転載禁止

現代語訳(枠内)

さて妊娠中は、少し気分が悪いといっても、むやみに売薬などを服してはいけない。大方はよく養生して、を服(のま)ないのがよい。

もし薬を用いろうとするならば、熟練した医者を頼りにすること。夏月といえども板敷などにいて、腰を冷やしてはならない。ならば腰巻など厚くして温かくすること。

また針仕事などしても、飽きて疲れるまでしてはならない。程よく体を動かし、はたらいて、よく慎み守れば、必ずよき子が生まれ一生の宝となるだろう。

この外、産前・産後の育て方は、子の数多い老女に聞いて相談すること。出産が軽かったとして、のちに慎まなかったならば、大いな害があるだろう。

>>原文(史料解読文)

解説

史料挿絵は、傘の中の女性が前に赤ちゃんを抱っこしていて、周りには下女や下男と思われる人々が付き添っており、出産を祝福するように小鳥もたくさん集まって来て、微笑ましいです。確かに『女大学』はとか下賤には余り関係ないようだ。

原文(史料解読文)

さて、懐胎(くわいたいひ)のうちは、少(すこ)し気分(きぶん)悪(あし)きとて、むざとしたる売薬(ばいやく)など服(のむ)へからず、大(おほ)かたはよく養生(やうじやう)して、薬(くすり)服(のま)ぬがよし

もし薬(くすり)を用(もち)ひんとならば巧者(こうしや)なる医(い)を恃(たの)むべし、夏月(かげつ)といへども、板敷(いたじき)などに居(を)りて、腰(こし)を冷(ひや)すべからず、冬(ふゆ)ならば、腰(こし)まきなど厚(あつ)くして、温(あたゝか)にすべし

又(また)針線(はりしごと)などするとも、倦労(うみつか)るゝまでなすべからず

程(ほど)よく、体(たい)を動(うご)かしはたらきて、よく慎(つゝ)しみ守(まも)らは、かならずよき子(こ)を産(うみ)て、一生の宝(たから)なるべし

此外、産前・産後の養(やしな)ひ方は、子(こ)数多(あまた)もてる老媼(おうな)に問(とい)て、計(はか)らふべし、産(さん)軽(かろ)しとて、後(のち)を慎(つゝし)まざれば、大なる害(がい)ありとなん

史料情報

  • 表題:女大学栄文庫
  • 年代:嘉永4. 8.(1851)/栄久堂 山本平吉 梓
  • 埼玉県立文書館収蔵 小室家文書2342
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
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女大学

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