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旅行用心集18

日記の書き方

江戸時代、旅先では現代のネット社会宜しくリアルタイムで日記を記す?!『旅行用心集』から紐解きます。

史料

日記の書き方_旅行用心集

※無断転載禁止

解読文

原文

○道中にて日記認方(しためかた)之事

道中にて名所(めいしよ)旧跡(きうせき)を尋(たつね)、風景(ふうけい)の能(よき)所又は珍敷物等に見聞たるならば、何月何日何所にて何を見ると有のまに書付、もし詩歌(しか)連俳(れんはい)等の句(く)、心にうかみたらば連続(れんぞく)せずとも、其(その)趣(をもむき)を日記にしるし置へし

又山川の真景(けしき)等を画に認るも、其通り見たるまゝを写し置、追而(おつて)帰国(きこく)の上、取立(とりたて)浄書(せいしよ)すべし、詩歌もつくり絵図(ゑづ)もよく書んとすれば、道中する邪魔(しやま)になりてよく出来ぬものなり、心得あるへし

現代語訳

○道中での日記の書き方について

道中にて名所旧跡を尋ね、風景がよい所又は珍しい物等を見聞きしたならば、何月何日どこで何を見たとありのままに書き付け、もし漢詩和歌連歌・俳諧等の句が心に浮かんだら繋げて書かなくとも、その趣きを日記に記し置くべし。

また山川の実際の景色等を画にしたためるのも、その通り見たままを写し置き、おって帰国の上、きれいに仕上げるべし。漢詩・和歌も作り絵画もよく描こうとすれば、旅の妨げになってよく出来ないものだ。心得あるべし。

解説

異体字

史料傍線を参照のこと。

  • 舊:旧(キュウ)/雈(冠毛のあるとり)+臼。とりの意。久に通じて、時間がたってひさしい、ふるいの意を表す。
  • 續:続(ゾク)/続は續の略体。糸がつづく、つぐの意。
  • 寫:写(シャ)/写は寫の略体。ものの上において重ねてかきうつすの意。
  • 繪:絵(え)絵は繪の通俗体。糸+會(あわせる)。五彩色の糸をあわせししゅうする意。派生して、えの意を表す。[註1]

MEMO

史料から、当時の旅は後で日記に記すというより、忘れないようにか、その場で書き付けていたように見受けられます。また旅先において「詩歌もつくり、絵図もよく書(かか)んとすれば、道中する邪魔に」なると注意喚起。そもそもそんな知的な作業、できない…。

補註

現代漢語例解辞典』(小学館、1996年)参照。

史料情報

  • 表題:旅行用心集/文化7(1810)
  • 八隅芦庵 著、彫工:佐脇庄兵衛・同 伊三郎、出版元:須原屋茂兵衛・須原屋伊八
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3361
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
  • ※無断転載を禁止します。

旅行用心集

1.概要 2.東海道 木曽路・3.そのⅡ 4.旅の前日 5.持ち物

6.チェックイン・7.アウト 8.食べ物 9.毒虫 10.ソリ

11.雪かき道具 12.頭巾、帽子 13.履物・14.かんじき、下駄

15.足ツボ 16.必需品 17.スーツケース 18.日記の書き方

19.天気予報 20.白澤 21.旧国名地図

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