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荻生徂徠『政談』2

荻生徂徠『政談』とは 将軍吉宗に献上した意見書

政談とは

概要

葵

『政談』とは、江戸中期の儒学者荻生徂徠が晩年、八代将軍吉宗に求められて献上した政治経済社会の問題点と対策を説いた意見書です。成立は享保一二(1727)頃とされています。

本書(巻之一冒頭)は「総ジテ国ノ治(おさめる)ト云ハ、譬(たと)ヘバ碁盤ノ目ヲ盛ルガ如シ。目ヲ盛ザル碁盤ニテハ、何程ノ上手ニテモ碁ハ打タレヌ也。」

快刀乱麻を断つような美しい文章から始まり、いみじくも本文で述べていること全て、この文章に集約されているといってよいでしょう。

ともあれ本書の具体は、徂徠の儒学に基づく深い見識と、千葉での流謫生活での実体験をもとに都市と農村の違いや都市の問題点を語っているので、説得力があります。また歴史を踏まえたうえで、どこをどのように改善するべきかを提言しています。

前述の通り『政談』は吉宗将軍に献上した意見書。本来であれば、当時の一般の人々が手にできるものではありません。しかし何故か『政談』は流出し、天保年間に入って中西忠蔵の手で出版され、需要があったので、江戸時代末期にかけて数度にわたり出版されました。

江戸中期に見る近代

『政談』を読んで思い出されるのが、スペインの哲学者・オルテガが1929年に著した書『大衆の反逆』。

オルテガはこの書で「都市は人で充満している。家々は借家人でいっぱい。」「密集、充満という現象は、以前にはあまり見られなかった」「いまや突然、群衆が一種の塊となって出現してきた」と現代社会を表現。これと同じ様なことを徂徠が早くも『政談』の中で都市江戸に対して指摘しています。

近代化とは、良くも悪くも大衆が様々な面で力を持つことと切り離せないと考えるなら、『政談』を読む限り、江戸中期に日本の近代化が既に進行してたと言っても過言ではありません。徂徠の書をそれでは、次項より徂徠が語る辛口政治批判&社会問題を見ていきましょう。

補註

  1. 辻達也 校注「政談」『日本思想大系36 荻生徂徠』(岩波書店、1973年)263頁
  2. オルテガ(著)、寺田和夫(翻訳)『大衆の反逆』(中央公論新社、2013年)
  3. 尾藤正英(翻訳)『荻生徂徠「政談」』(講談社、2013年)

荻生徂徠『政談』

1.荻生徂徠 2.本書概要 3.武士の非正規 4.旅宿暮らし

5.武士の貧困 6.医者 7.国替 8.外様譜代 9.国の困窮

10.歴史に学ぶ 11.貧困解決策 12.経済活動 13.スピード社会

14.物作り 15.衣服 16.品格 17.代官 18.御徒与力 19.人材登用

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