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荻生徂徠・政談その11

貧困を救う道

困窮を救う道

具体的な解決策は?

徂徠は、前ページで政治のあり方についてまず、歴史(古代中国の聖人の道)に学べ!と説きました。ここからはいよいよ貧困問題の具体的な解決策を、江戸の武士の現状を踏まえつつ徂徠の政談から見ていきましょう。

上下万民を土に定着させ、その上で礼法の制度を立てよ

江戸住まいが増加

「上下の困窮を救う道とて、別に奇妙なる妙術があるわけではない。ただ古(いにしえ)の聖人の仕方にあって、今の世には欠けていることがある。これを考えて改めるのである。

それはどのようなことかと言えば、古(いにしえ)の聖人の法の根本とは、上下万民をみな土地に定着させ、その上に礼法の制度を立てることである。

現在はこの二つが欠けているので、上下が困窮し、種々の悪いことも起こるのである。一巻目に言ったように、現在は上下みな旅宿暮らしであり、古の聖人が上下万民を土地に定着させた治め方と全く反対である。

現在は一切のことに制度がなく、衣服より住居・器物まで貴賤の階級がないので、奢(おご)りを押さえる規則もない。これは古の聖人が礼法・制度を立てたことと全く反対である。」

武士は皆、旅宿生活

「制度の事はあとで述べる。まず、旅宿暮らしのことを言えば、諸大名が一年替わりに御城下(ごじょうか)に勤め住めば、一年ごとの旅宿暮らしである。

その妻は常に江戸に住んでいるので、ずっと旅宿暮らしである。その旗本の諸士も常に江戸にいて、常に旅宿暮らしである。

諸大名の家中もだいたいその城下に集まって住み、各々の知行所に住んでいないので旅宿の生活の上、近年は江戸勝手(諸大名の家来がその知行所どころか、城下をも離れ、江戸の藩邸に長く住んで、江戸の生活に馴染んでしまったこと)の家来が次第に多くなった。

これらのこと総じて、武士と言うほどの者で旅宿暮らしでない者は一人もいない。」

箸一本でも銭を出さなければいけない暮らし

箸

「諸国の民の工業や商業に携わる者、俸手振(ぼうてふり・荷物を担って売声を立てて歩く商人)や日雇い力仕事などの定職を持たない者も、故郷を離れて、御城下に集まる者は年々いよいよ増えている。

旅宿暮らしも旅宿暮らしと心得る時は物入りも少ないが、江戸中の者が旅宿暮らしということは夢にもつかず、旅宿暮らしを常だと心得ている。

だから上より賜る禄は残らず御城下の商人の物となり、馬を持つこともできず、人を持つこともできない。俸禄の米が支給される間は物を質に預けて生活を繋ぎ、あるいは町人に金品を送り届けることを頼み、己の財産は人の手に渡るようになって哀しいではないか。

つまるところ、箸一本でも銭を出して買い調えなければならない暮らしをしているので、このようになったのだ。」

  

政談の現代語訳について

当サイトの政談の現代語訳は、吉川 幸次郎, 丸山 真男, 西田 太一郎, 辻 達也 (著)『日本思想大系〈36〉荻生徂徠 (1973年) 』(岩波書店、1973年)をもとに当サイトの運営者が現代語訳しました。

その際、荻生 徂徠 (著), 尾藤 正英 (翻訳)『荻生徂徠「政談」 (講談社学術文庫) 』(講談社、2013年)も参考にさせていただきました。

荻生徂徠・政談

1.荻生徂徠とは/2.政談とは/3.譜代と出替り奉公人/4.旅宿暮らしの武家

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11.貧困を救う道/ 12.金で物を買う将軍/13.スピード社会・江戸

14.スピード重視の家作り/15.衣服の制度がない/16.上に立つ者の品格

17.代官とは/18.御徒・与力とは/19.人の器とは

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