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度量衡講座9

江戸時代の貨幣 種類や単位などポイント整理

複雑な江戸時代の金・銀・銭の概要から、種類や単位、古文書解読するうえでのコツなど解説します。

三貨 種類と比率

金貨 一両小判 二分金 一分金(小粒) 二朱金 一朱金
楕円 四角 四角 四角 四角
発行年 文政元 (1818) 元禄一〇 (1697) 文政七 (1824)
枚数 一枚 二枚 四枚 八枚 一六枚
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銀貨 丁銀・豆板 一分銀 二朱銀(二朱) 一朱銀
秤量 計数 計数 計数
なまこ形・豆形 四角 四角 四角
発行年 天保八 (1837) 安永元 (1772) 文政一二 (1829)
重さor枚数 五〇~六〇 四枚 八枚 一六枚
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銭貨 一文銭
五円玉に類似
枚数 四〇〇〇~一〇〇〇〇枚

概要

江戸時代の貨幣は、金貨銀貨銭貨(せんか)の三種。中世からいた両替商は、三貨(さんか)制度の成立以後、各種貨幣の交換取引が増加することにより発達しました。

三貨制度の複雑怪奇を現代風に表現すると、日本国内で円の他にドルユーロも出回っているような状況です。滝汗

金貨

江戸時代、金貨において大判は十両で、主に贈り物に使用。品質は小判より劣っており、大判一枚の価値は小判で七両二分です。

銀貨

銀貨は、重さ(目方)を計って使用する秤量(ひょうりょう)貨幣。純金は灰吹(はいふき)、純度〇.八は丁銀(ちょうぎん)と言います。

実際に使われていたのは丁銀。丁銀と純度が同じで小さな形の銀貨は豆板(まめいた)と言いました。実際使用する際は、丁銀と豆板とを併せて四三匁になるようにし、両替商がこれを袋に入れて、封印して通貨としました。人々は両替商の名を見て、用して使っていました。

銭貨

金貨や銀貨は多額の売買に、少額の売買は全国共通で銭貨を使用。銭貨は普通、一文銭九六枚で百文として通用。五円玉は一文銭の名残で真ん中に穴がありますが、世界的に珍しいようです。

身分では上級武士ではだいたい金貨、下級武士と商人が銀貨、庶民・百姓が銭貨。地域では、江戸では主に金遣(づか)い、上方では銀遣いとなります。

計数銀貨の登場

幕府は金貨を発行するも、金量に限りがあり、次第に品位は落ちいきました。このため、金貨の代用として計数銀貨を発行。便利で少額な計数銀貨は世に普及しましたが、金貨と単位が同じのため、古文書解読においてややこしい問題が出てきます。

例えば文政五年(1808)の借入れ証文にあるように、「二朱」と言った場合、金二朱or二朱銀、どちらを指しているのか考えなければいけません。

金二朱を採用した場合、一朱金は文政七年(1824)発行なので、それより以前の「二朱」は二朱金一枚(で支払いor受取り)となります。しかし二朱銀を採用した場合でも、上記表の通り金額に変わりありません。

単位

  1. 金一両=四分=一六朱
  2. 銀一貫=1,000匁=10,000分
  3. 銭一貫=1,000文

現在のお金の単位は円で統一されていますが、江戸時代の三貨はそれぞれに単位をもっています。金貨は四進法。秤量銀貨は重さの単位、計数銀貨は金貨の単位の分・朱を使用します。

貫は銀銭両方に使用。古文書では、○貫○匁、○貫○文と書かれているので、先頭が銀or銭かで見分けます。分は金銀両方に使用。古文書で金貨の場合は、○両○分○朱と書かれているので、先頭が金or銀かで見分けます。

以上の理由あって、江戸時代の貨幣の理解は大変難しいです。実のところ、という架空の単位もあります。(笑) 然しながら古文書初学者は、とりあえず貨幣単位のくずし字だけ覚えておけばまずは問題ないでしょう。

参考文献

  1. 東京都江戸東京博物館 学芸課展示係 編『図表でみる江戸・東京の世界』(東京都江戸東京博物館、1998年)
  2. 菅野則子・桜井由幾『入門 古文書を楽しむ』(竹内書店新社、2000年)
  3. 佐藤健一 編『江戸の寺子屋入門-算術を中心として』(研成社、1996年)

度量衡講座

1.石高 2.面積 3.石盛 4.石盛と石高を極める1 5.その2

6.重さ 7.駄馬の種類と積載量 8.長さ

9.江戸時代の貨幣 10.金貨 11.銀貨 12.銭貨

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