くずし字で楽しむ江戸時代

古文書ネット

  1. HOME
  2. 入門講座
  3. 古文書様式

古文書様式12

奉書とは 人の意を奉じて出す書状の総称

奉書とは

概要

奉書(ほうしょ)は直状に対し、人の意を奉じて出す書状を総括していいます。御教書下知状など。現在の封書の源流で、様式は御教書と同じような形式です。

変遷

平安時代

特に三位以上の人の奉書を敬して、御教書といいました。また御教書以外の奉書は、狭義の奉書といえます。

中世:鎌倉時代

御教書や下知状とは別に、幕府の政所・侍所あるいは奉行・引付頭人(ひきつけとうにん:裁判機関・引付衆首席)などが上意を奉じて出すものを、とくに奉書と称しました。

同:室町時代

室町幕府奉書は、奉行・頭人、将軍の内談衆などが、公的の御教書あるいは私的の内書(ないしょ)に添えて出す場合が多いです。

  • 将軍家御教書:公的。管領が上位を奉じて出す。(末文)被仰下
  • 御判(ごはんの)御教書:公的。将軍の署判があり、様式の上では直状[]。(書止)状如件
  • 御内書(ごないしょ):私的。将軍から下した内密の書状。直状形式で、御判御教書よりいっそう書状に近い様式。通例将軍の侍臣(じしん)が副状(そえじょう)をつける。(書止)也

同:戦国時代

近世:江戸時代

執達状

執達状(しったつじょう)は、御教書の俗称。由来は、書止めに「依仰執達如件」(おおせより、しったつくだんのごとし)などとあるため。執達(しったつ)とは、上意を受けて下に通達すること。

例:室町幕府奉行人連署奉書

当寺領、山城国柳原一橋 最勝光院敷地事

…(本文略)…所被仰下也、仍執達如件

//文明十四年十二月廿九日 対馬守(松田数秀)(花押)

///////////// 下野守(布施秀基)(花押)

///東寺雑掌

(東寺百合文書ホ函、京都府立総合資料館所蔵)

読み下し文

当寺領、山城国柳原一橋(最勝光院敷地)の事…仰せ下さる所なり、仍って執達くだんの如し、文明(戦国時代)十四年(1482年)十二月廿九日(以下略)

文書の背景と経緯

  1. 前将軍足利義政の東山山荘の造営費や人夫(にんぷ)は、寺社本所領に例外なく賦課された。
  2. 東福寺は柳原一橋の地を自分の寺領とみて、幕府から命ぜられた造営費を掛ける。
  3. この地の住民は、ここは東寺最勝光院敷地であって、東福寺の賦課に応じず。
  4. 東福寺がいきなり住民の家屋を検封(けんぷう:中世、犯罪人の住宅を封印すること。)。
  5. 幕府が恐らく東寺からの訴えに基づいて、東福寺に検封を解くよう命ずるも応じず。
  6. 東福寺、将軍の命令違反によって、係争の地は東寺の一円支配を認める。
  • 雑掌(ざっしょう):古代から中世にかけ、官庁・幕府・荘園などに雇われ、年貢の取り立てや家の兼業、雑務などをした者。

補註

御判御教書と称したのは、御教書が本来、奉書形式文書だった歴史がおざなりになり、将軍の発給文書に対する敬称の意味に転用されたと考えられる。[文献3 168頁]

参考文献

  1. 富田正弘「奉書」『国史大辞典12』(吉川弘文館、1979年)589頁
  2. 伊木壽一『日本古文書学』(雄山閣出版、第三版1990年)「第14章 古文書の種類 第一節 公文書・準公文書 第四頁 鎌倉時代」307-308頁、「同章同節 第五頁 室町時代・安土桃山時代・江戸時代」313-318頁
  3. 佐藤進一『古文書学入門』(法政大学出版局、1997年)「第三章 古文書の様式 第三節 武家様文書 三 御教書・奉書」162-164、167-172頁

古文書の様式

1.概要 2.詔書・勅書、太政官符など

3.宣旨、官宣旨 4.政所と家司

5.御教書 6.鎌倉幕府 御教書 7.連署 8.領家

9.政所下文 10.直状 11.下知状 12.奉書

関連記事

扁額:京都 広隆寺奥州市 社寺秩父 金昌寺