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古文書様式9

政所下文とは 公卿および鎌倉幕府・源頼朝の例

下文とは

下文(くだしぶみ)は、被官に下すお役所風の文書。これに対し御教書は、私的意味の文書です。

公卿政所下文

政所の家司が出す、荘園等に関する文書。官宣旨の式による公卿政所下文をもって命令しました。

式:(書出)何々家(け)政所下(くだす)

  • 摂政家政所下
  • 関白家政所下
  • 太政大臣家政下

鎌倉幕府政所下文

鎌倉幕府の機構_頼朝時代
鎌倉幕府の機構_頼朝時代

治承(じしょう)四年(1180)源頼朝は、富士川の戦いのあと、侍所(さむらいどころ)を設け、御家人を統率。元暦(げんりゃく)元年(1184)には、公文所(くもんじょ)と問注所(もんちゅうじょ)を開きました。

公文所はのちに整備され政所(まんどころ)と改称され、一般の政務や財政事務を管掌。問注所は訴訟・裁判処理機関。

頼朝が武家政治を行うに及んで、藤原氏に倣って下文および御教書を出しました。鎌倉時代の下文には公卿の政所下文に準拠した政所下文と、領家などの下文に倣った直状様式の下文、二通りがあります。

いずれも所領の安堵・補任等、民政関係のことに出される場合が多いです。

例:前右大将(源頼朝)家政所下文

前右大将家政所下  左兵衛尉惟宗忠久

……(本文略)……

///建久八年(1197:鎌倉前期)十二月三日 案主清原、知家事中原

令大蔵丞藤原(花押:武藤頼平)、別当前因幡守中原朝臣

//散位藤原朝臣(花押:二階堂行政)

(島津家文書、東京大学史料編纂所所蔵)

解説

源頼朝が、大隅・薩摩の家人奉行人(地方官)・島津忠久に対して職責事項を明示した文書。

  • 源頼朝:権大納言兼右近衛大将(うこんえの‐だいしょう)辞任→ 征夷大将軍→ 上洛して将軍職を辞す→ 前右大将(に戻る)
  • 島津忠久:本姓(ほんせい:本家の姓)惟宗氏。左兵衛尉(さひょうえの‐じょう)。
  • 政所職員:別当・令(りょう)・知家事(ちげじ)・案主(あんじゅ)

参考文献

  • 伊木壽一『日本古文書学』(雄山閣出版、第三版1990年)「第14章 古文書の種類 第三項 藤原期・院政期 〇公卿政所下文」295-296頁
  • 佐藤進一『古文書学入門』(法政大学出版局、1997年)「第三章 古文書の様式 第三節 武家様文書 一 下文 (ハ)政所下文」121-124頁
  • 佐藤信・五味文彦・高埜利彦・鳥海靖『詳説日本史研究』(山川出版社、2017年)「第四章 中世社会の成立 2鎌倉幕府の成立」135頁

古文書の様式

1.概要 2.詔書・勅書、太政官符など

3.宣旨、官宣旨 4.政所と家司

5.御教書 6.鎌倉幕府 御教書 7.連署 8.領家

9.政所下文 10.直状 11.下知状 12.奉書

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