信とは
信(しん)とは、自分の言葉に責任を持つこと[文献1]。
江戸時代の初等教科書『百姓往来』(文政三)信の項に「落ちぶれて不憫で貧しき人には情けをかけ、とりわけ親しく交わって人の誠と言うべきだ」
同書および一般にも信と誠が、ほぼ同義語で使われることがあります。しかし荻生徂徠は信と誠を使い分けています。
徂徠『弁名』上_忠信 三則に曰く「信なる者は、言に必ず徴(証拠、実証)あるを謂ふなり。世多くは言に欺詐(いつわり)なきを以てこれを解す。いやしくも言に必ず徴あるを以て心となさば、すなはち欺詐なきこと道(い)ふに足らず。」
「忠は政事(政治)の科たり」「また「文・行・忠・信」のごときは、信は言語の科たり。言語の道は、微あるを尊ぶ。」
また同書上_誠 一則に曰く「先王・孔子の教へは、忠信ありて誠なし」「信は疑はざるを謂ふなり」「天の徳は誠なり」。
かくして新選組がその背中に掲げる「誠」はどういう意味で使用しているのかわかりませんが、いずれにせよ儒教道徳に由来していると考えられます。
経書(儒教の経典)
参考文献
- 平岡武夫『全釈漢文大系 第一巻 論語』(集英社, 1980年 )
- 西田太一郎 校注「弁名」『日本思想大系36 荻生徂徠』(岩波書店、1973年)
- 木村英一・鈴木喜一訳「論語」、竹岡八雄・日原利国訳「荀子」、竹内照夫訳「礼記」『中国古典文学大系3』(平凡社、1970年)