くずし字で楽しむ江戸時代

古文書ネット

  1. HOME
  2. 入門講座
  3. 古文書概論

古文書概論12

古文書を読む意義 何故読むのか

序文

慈悲ぶかく慈愛あつき神の御名(みな)において。読め、「創造主なる汝の主の御名において。主は凝血から人間を造りたもうた」『コーラン』第96スーラ(章)[]

戦後の壁

仰々しいタイトルですが、古文書を始める理由は私含め概ねなんとなく、が大方ではないでしょうか。

戦後八〇年を迎えるにあたりテレビから、戦争体験を語る方の減少が止まらないという、当たり前のことを聞かされるにおよび、ここに筆を投じ以ってキーボードをとりました。

かくして、いつになったらテレビは(文科省でもいいけれど)、故人が遺された戦争体験を「読む」方の減少を心配してくれるのだろうか。意味がわかりませんが、テレビ自体が本質的に音声メディアだからかもしれない。あまつさえ未だテレビとか言っている私こそ、昭和の残滓(ざんし)。いな、期待を込めて言ってます。

書き方の歴史で述べましたが、漢字制限よろしく戦前と戦後で書字違いがあります。現代人が戦前の書物にアクセスするのは物理的以上に技術的に難しい、ということ自体をまず明確に認識することが大事なのです。

それほど戦争に詳しくない自分が言うのもなんですが、実際これを読んでくださっている方はWEB上において活字体を読んでいるのであって、よしんば現代語であっても内容の如何に関わらず「手書き」や「手記」を読むのは、一般にしんどく感じられるはずです。

けだし読むのがしんどいから、難解だから読んではいけない法はないですし、むしろ今と違った昔の人の書き方に知性や魅力を感じる方もいるでしょう。試しに戦後の坂口安吾『堕落論』、高見順『あるリベラリスト』に挑戦してみてください。当時の時代の空気も感じることができると思います。

そもそも「大東亜共栄圏」しかり、戦前はの数え方に「神武天皇即位紀元」があり「紀元節」(旧建国記念日)など独特な表現で、とにかく文章だけは冴えている。当時はラジオ体操と懸垂ばかりと思っていたけれど、どうやら戦後より文字に親しみ勉強のしすぎで頭がおかしくなったか。

だから、私たちが総じて現在進行形で失われているのはリアルティではないでしょうか。要するにお米以上に言葉が枯渇している。

かくして「核兵器をなくそう!」とか「戦争のない平和な世界」などが、白々しく聞こえてしまう素直な人こそ須(すべか)らく「読む」べし。何故これらが白々しく聞こえてしまうかというと、「話を端折って」しまった声を聴かされているからだと思います。一方で加害については未だ口を閉ざしたまま。

ともあれ何事も大切なことほど時間がかかるでしょうし、時間をかけた方がの記憶にも確実に長く残るじませう。AIの時代にはなおのこと…

補註

訳はリンク先の本に従ったが、コーランは読むといっても声に出して読むもの、らしいのです。当教室でも毎回、史料を受講生一人ずつ(こちらで割り振った箇所を)読誦(どくしょう)してもらうことに始まります。その理由は単に、前回のおさらい且つ読みが意外と難しいから。

古文書概論

1.古文書(こもんじょ)とは

2.特徴 3.文字の種類 4.書き方の歴史

5.古文書の種類 6.最初に覚えること

7.くずし字の覚え方 学習法:8.概論 9.具体

10.書けなくてもいい? 11.漢文との違い

12.読む意義 13.資格取得 14.読む猫

15.向いているかな判定 16.学習チェックリスト

関連記事:文語を読む