それは古代中国思想
解説
1.都市江戸の成り立ち
上記リスト、随分突飛(とっぴ)なことを言うようですが、日本史を極めたいからといって国内のことだけやってる方が却って無理があると思いませんか。
逆に上記は漢字文化圏――琉球はもちろん、中国・朝鮮など共通なので、世界史の観点からいうと大変都合がよいのです。
徳川家康は、陰陽五行説の奥義を体得。幕府を開いた時、江戸はほとんど廃墟に近い状態でしたが、側近の天海僧正が天台密教や陰陽道に基づいて都市江戸を構築。江戸時代はその成り立ちからいっても、古代中国と切ってもきれない関係です。
2.暮らしと暦
江戸時代の暦は、現行暦(太陽暦)ではなく旧暦(陰暦)。旧暦を理解するには、陰陽五行説及び十干・十二支・干支の知識が必須です。
江戸時代の人々も現代人のように暦――則ちカレンダーは暮らしに欠かせないアイテム。農事、干支の行事、歳時記、縁起のいい方角など、祝日しか気にしていない現代人よりむしろ大切なくらいです。
然しながら伊勢暦の解読は初学者には難しいですから、とりあえず江戸時代は旧暦を使っていて、旧暦の日付は現行暦より1か月~1か月半後ろにズレる(例:日本の正月(現行暦1月)と中国の春節(現行暦2月))とだけ覚えおいてください。
3.学問
江戸時代の学問はきほん、儒教・四書五経。よって百姓往来や女大学に見られるように子供向け教科書(往来物)から、五人組帳、随筆、荻生徂徠『政談』など、江戸時代の書の多くに儒教の影響が見て取れます。
然しながら経書(儒学の経典)は漢文で、四書五経だけでも相当な分量。ゆえ、これを極めんとするは、古文書学の側からいうと現実的でないような気もします。そうであっても、どうして一定の経書の知識がある人が、古文書において俄然有利に働かないことがあろうか…という、反論もまた否めません。
4.日本の欧米化
欧米人が江戸時代の人々を理解するのは、容易ではないと思われるでしょう。ならば新暦なり個人主義なり欧米文化を受け入れた現代日本人にも全く同じことが言えます。
再び突飛なことを言うようですが、180度思考の転換をしなければならない! くらいの気持ちで挑んだ方が古文書は習得しやすいでしょう。昔といえど同じ民族だから…とヘンなバイアスは、却って障害になります。
くずし字云々以前に、できる限り江戸時代の人々の、ものの見方、感じ方を身に付けること、同じ目線に立つこと。これが古文書を体得するコツです。
古文書概論
5.古文書の種類 6.最初に覚えること