解説
概要
史料は子供たちの大勢を、町火(まちび)消しに見立て描かれています。
町火消しの火事装束は、木綿の股引をはき、頭巾をかぶり、羽織は裏返して着られるようになっています。また史料のように、組の目印である纏(まとい)、類焼を防ぐためにの道具や梯子をもって仕事に挑みました。
浮世絵は火事に限らず、鯰絵の持丸たからの出船、はしか童子退治図、和漢獣物大合戦之図などにも見られるように、子供や動物を何かに見立てて描くというは定番中の定番。むしろ得意とするところ、なのではないかと思います。
江戸時代、子供は村の子。現代よりも大人社会と子供の世界も近かったはずで、当然、絵の題材にもなり得たでしょう。
史料の文字
拡大図のくずし字は「東都名所 日本橋従高輪之風景 子供(こども)あにひ纏(まとい)固図小(こづこ)」。この文字列の解読が意外と難しいです。
東都は江戸の意。所は異体字(旧字)。従は「より」と読みます。あにひは、変体仮名で阿耳比をくずした字体。現行の平仮名は安仁比。あにいは勇み肌の若者の意。
固、図ともに両側に点を打つ囗(くにがまえ)の典型的くずし字。また図は異体字・圖。固(かため)は警護の意。
以上、直訳すると"江戸名所 日本橋より高輪の風景 子供が勇む(火消し)纏、警護のかわいい図" かな?
参考文献
池上良太 『図解 日本の装束』(新紀元社、2008年)「江戸時代の火消しの服装」104-105頁
史料情報
- 表題:東都名所日本橋従高輪之風景 子供あにひ纏固図小
- 年代:―(江戸時代)/国綱画、蔦吉板/形態:三枚続
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書6367-10
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