史料
解説
概要、背景
史料は「和漢獣物大合戦之図」とあり、図は異体字(旧字)「圖」で記されています。
右側には中国の動物、左側には日本の動物が描かれ、東西に分かれ関ヶ原に見立てた?アバンギャルドな合戦図。画家は動物をモチーフにする浮世絵師で有名な国芳(くによし)の弟子・芳年(よしとし)。
まともに戦えば、サイズ的にも島国の動物が負けるんじゃなかろうか。また、あちらの動物も日本の鎧で、大砲でもなく槍や刀!
ところで私は一瞬、慶長の役・泗川の戦いかと思ったのですが、大合戦之図といえど全体的にほっこり。江戸時代、瓦版に見られるように海を越えて日本に見世物として珍獣が入ってきました。これらを純粋に愛でているのではないかと考えられます。
史料に描かれた動物
史料右端に象二匹。うち大将格の采配を手にした象に、真田幸村のごとく先鋒をきるのは卯(ウサギ)。
瓦版の象(文久三)によれば「一疋の大象を印度」で「生け捕り、我が新港横浜に渡来」「漢土(かんど:中国)の大国なることまれなり」
ひと際目を引く大将格の象は、紙面の都合上か、さほど大きく描かれていません。右下は大きな黒い山羊(ヤギ)、その斜め上は白山羊だろうか。中央の大きい斧を手に、亥(イノシシ)が一匹で周りの動物を蹴散らします。
中央下の虎みたいのが黒く長い延べ棒のようなもので、亥を超えて、太鼓を輪形に連ねた雷神に見立てた大きな子(ネズミ)?の首を突いています。雷神も元を辿ると中国に行きついてしまうような…。
子の斜め上は白い戌(イヌ)、家紋もでなく「日本一」とありそうでない旗指物を指している申(サル)、後ろに午(ウマ)、隣りはナマズ?、右端は手の長い申、白い猫、亥?
激しくぶつかり合う和漢の動物たち。然しながら和漢共通して十二支の動物を中心に描かれているように思われます。江戸時代にパンダが知られ日本に来ていたら、この絵もまた違ったものになったでしょう。
史料情報
- 表題:和漢獣物大合戦之図
- 年代:-(江戸時代)/芳年戯筆/形態:三枚続
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書6367-12
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錦絵
日本と中国の動物/百器夜行