解読文
原文
西両国広小路において三月上旬ゟ興業仕候
演技告條/神洲(しんしやう)の武威(ぶゐ)四夷(しい)に轟(とゝろ)き、聖代(せいたい)の徳澤(とくたく)八蛮(はちわん)に溢(あふ)れ、海外(かいくわい)万里(ばんり)の波濤(はとう)を凌(しの)ぎ招(まね)かさるに異邦(いはう)の
奇品(きひん)膝下(しつか)に入貢(にうこう)せるをもて、未見(みけん)の万物(はんもつ)日夜(にちや)を選(えら)ばず時々(しし)刻々に舶来(はくらい)せり、その中に今般(こんはん)欧邏巴(ようろつは)
人(じん)アルキウルなる者(もの)、印度(いんど)部中馬爾加国(まなかこく)スレーツヘルゲンといへる大(たい)山のふもと数千里(すうせんり)せりの大(だい)原野に一疋の大象(さう)を
生(いけ)とり我(わか)新(しん)港横(よこ)はまに渡来(とらい)なせり、そも/\象(さう)は西南(せいなん)の夷地(いち)に生(しやう)す、漢土(かんと)の大国(たいこく)なることまれなり
※()における仮名ルビにおいて、不明瞭な文字は省略した。
現代語訳
西両国広小路において三月上旬(現行暦 四月ごろ)より興業します。
演技のチラシ:日本の威光は四方に轟き、優れた(徳川の)治世の恵みはへき地にまで溢れ、海外の遠い国の大きな波をしのぎ、招かざる外国の珍しい品がひざ元に入貢した。まだ見ぬ万物は、日夜を選ばず刻々に舶来している。
その中にこの度、ヨーロッパ人アルキウルなる者が、インド部中馬爾加国スレツーヘルゲンと言われる大山のふもと数千里ある大原野に一疋の大象を生け捕り、我が新港横浜に渡来した。そもそも象は、西南の未開の地に生き、中国の大国でも象がいることは稀だ。
用語
史料の文中は難しい単語が並び、厳かな文章で象の興業をお知らせしています。
史料情報
- 表題:象見世物絵
- 年代:文久3.弥生.上旬/一登斎芳豊 画・仮名垣魯文訳 誌、版元:通油町 藤岡屋慶次郎
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書5780
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