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百姓往来その5

忠(ちゅう)とは

江戸時代の往来物(教科書)『百姓往来』から、儒教道徳・弟について紐解きます。

史料

忠(ちゅう)_百姓往来

※無断転載禁止

解読文

忠(ちう)/人につかふるには、主(しゆ)人の恩賞(おんしやう)・情(なさけ)のあるなしに、少しもかまふべからず、唯(たゞ)蔭(かげ)日向(ひなた)なく、昼夜(ちうや)こゝろをはげまし、忠勤(ちうきん)を抽(ぬきん)すべし

かならず仮(かり)にも主人をうらみ、讒(そし)る事、物体(もつたい)なきわざなり、心づくへし/哥ニ 身のとがは おもひもかけず 主人をそしる 人こそ あはれなりける

現代語訳

忠(ちゅう)[1]/人に仕える際には、主人の恩賞や情けのあるなしに少しも構うべからず[2]。ただ蔭日向なく、昼夜気持ちを奮い立たせ忠勤に励む[3]べき。決して仮にも主人を恨み、そしることは、もっての外の行いだ。心から仕えるべし。

歌に「身のとがは おもひもかけず 主人をそしる 人こそ あはれなりける」(身の過ちは予期しない。主人を謗(そし)る人こそ憐れである。)

補註

  1. 忠…『論語』学而04「人の為めに謀りて忠ならざるか」(人の世話をした時にまごころをつくさなかったことはないか)
  2. 主人の恩賞や情けのあるなしに…『論語』顔淵21「先事後得(事を先にして得るをことを後にする)」
  3. 忠勤に励む…『論語』八佾19「臣(しん)君(きみ)に事えるに忠を以つてす」

解説

五人組の掟である『五人組前書』(文政一二)の第四条において「忠を励み、夫婦・兄弟・諸親類は睦敷、奉公人に至るまでいつも情けをかけ、一人ひとり家業を大切に心懸けること事」とあります。

『世話字往来』(天保.再刻/埼玉県立文書館所蔵 足立家506)という往来物(教科書)では「上つがた(身分の高い人)は 無理いふものと心得て 勤(つとむ)ることを奉公といふ」とありました。

『百姓往来』(文政三)と違い、『世話字往来』では本音と建て前を使い分けた対応です。『論語』先進24においても「道を以て君に仕え」、ただ従っていればいい、というのではありません。

同じ往来物(教科書)でも『世話字往来』は特に身分問わず、『百姓往来』は百姓の子という事情があるとは思います。けだし、史料の絵にしても何時代の話をしてんだ、と思います。

  

参考文献

平岡武夫『全釈漢文大系 第一巻 論語』(集英社, 1980年 )

史料情報

  • 表題:百姓往来
  • 年代:文政 3/出所:浪花禿帚子再訂 /宛所:西村屋与八外 /形態:竪帳
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3384
  • 当サイトは埼玉県立文書館から掲載許可を頂いてます。
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百姓往来

1.百姓往来とは/2.仁徳天皇/3./4./5.忠/6./7.耕作道具/8.年貢の納め方、助郷

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