解読文
原文
奉公人手形之事/一 当年ノ夏成御年貢差支無拠、此たみ与申女慥成者二付、我等請人二罷立当年ノ閏五月ゟ来ル極月迄、壱季御奉公ニ差出給金之儀者、壱両壱分二相究申候、給金之外ニ金三分別段借用申処実証也
都合金弐両慥二請取、御年貢御上納申候所、実証二御座候、金三分之儀者来ル極月首尾克御暇被下候節、元金三分者無相違返済可仕候、然ル上者給金之外者一切御構なく御召仕可被成候、御家御作法何二而も為相背申間敷候、若病者其外取逃欠落相仕候ハヽ、御作法通可被成候事
一 御公儀様御法度之義者不及申候事/一 宗旨之義者代々禅宗大谷村・宗悟寺檀那紛無御座候事
武州比企郡上山田村 人主・多兵衛、請人・磯五郎/弘化三酉年ノ閏五月廿五日/板井村・平兵衛殿
>>読み下し文
現代語訳
奉公人の証文のこと/一 当年の夏に納める畑年貢に差し障り、やむをえず、このたみと申します女は確かな者ですので、我らが保証人にとなり、当年の閏五月より一二月まで(およそ)一年間御奉公に差出します。
給料のことは一両一分(約95,000円)に決定しました。給金のほか金三分(約60,000円)をとりわけお借りしましたことは確かです。都合、金二両(およそ150,000円)は確かに受取り、年貢として上納しますこと確かです。元金の金三分については、来る一二月に都合よくお暇をいただけた時に間違いなく返済します。
そういうことですので、給金のほかは一切お構いなく召し抱えください。お家の御作法は何れも背くことはさせません。もし病気をしたり、窃盗して逃げたり、家出をしましたら、御作法の通りにしてください。一 御公儀様の御法令のことは言うまでもありません。一 宗派につきましては、代々禅宗大谷村(埼玉県東松山市)宗悟寺の檀家に間違いありません。
武州比企郡上山田村(埼玉県比企郡滑川町)身元保証人・多兵衛、連帯保証人・儀五郎
弘化三丙午年(江戸後期)閏五月二五日/板井村(相給/埼玉県熊谷市)平兵衛殿(同村名主)
解説
奉公人手形とは、奉公人請状(ほうこうにん-うけじょう)のこと。簡単にいうと、江戸時代の労働契約書です。雇われる方が、奉公の期間、給金、労働条件などを書いて雇い主に提出します。
古文書の学習がある程度進むと、手引書等で奉公人請状を目にすることも多々あるのですが、質地証文同様、解読が結構難しいと思います。次頁にて奉公人請状の書式を掲載したのでチェックしてみてください。
参考資料
- 桜井由幾「奉公人請状」『入門 古文書を楽しむ』(竹内書店新社、2000年)187頁
- 嗣永芳照『古文書入門講座』(新人物往来社、1992年)
読み下し文
奉公人手形の事/ 一 当年の夏成(なつなり)御年貢差支え、よんどろなく、このたみと申す女たしか成る者に付き、我等請人にまかり立ち罷立、当年の閏五月より来る極月まで壱季(いっき)御奉公に差出し、給金の儀は壱両壱分に相究め申し候、給金のほかに金三分別段借用申すところ実証なり、
都合金弐両たしかに請取り、御年貢御上納申し候ところ、実証に御座候、金三分の儀は来る極月しゅびよく御暇(おいとま)くだされ候せつ、元金三分は相違なく返済仕るべく候、然る上は給金のほかは一切御構なく御召仕い成さるべく候、御家御作法何れにても相背かせ申すまじく候
もし病者そのほか取逃げ欠落(かけおち)相仕りそうらわば、御作法どおり成さるべく候こと/一 御公儀様御法度の義は申すに及ばず候こと/一 宗旨の義は代々禅宗大谷村・宗悟寺檀那紛れ御座なく候こと
武州比企郡上山田村 人主(ひとぬし)・多兵衛、請人(うけにん)・磯五郎
史料情報
- 表題:奉公人手形之事(多み壱季奉公ニ付)
- 埼玉県立文書館所蔵 飯島家507
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