原文:解読文
安政二年九月
同六年同月
- 一 真言宗 上野村多門寺㊞旦那 家主・斎藤左司馬㊞五十六才、同寺㊞旦那 女房みの㊞五十一才、同寺㊞旦那 母いち㊞七十五才、同寺㊞倅平三改名 斉藤実平㊞廿八才
解説
用語
- 旦那(だんな):檀那。下記3.檀家の意。ここでは主人に対する尊称の意味でない。
- 旦那寺(だんなでら):檀那寺の宛字。その家が帰依して檀家となっている寺。菩提寺。
- 檀家(だんか):ある寺に法要や墓地の管理を任せ、布施などにより寺を財政面などで援助する俗家。
- 家主(いえぬし):「やぬし」とも。その家の主人。
その他
- 真言宗(しんごんしゅう):空海を祖とする仏教宗派の一。
- 上野村(うえのむら):武州入間郡の一で、現在の埼玉県入間郡越生町(おごせまち)。
概要
史料は宗門人別帳本文冒頭で、当帳には百姓が記載されます。
史料最終頁には名主・斎藤左司馬とあり、彼の身分は武士ではなく、宗門人別帳に苗字の記載が許された百姓。また斎藤左司馬は当帳表紙にも書いてありますが、旦那寺の上野村ではなく、あくまで同郡平山村の名主です。斎藤家は使用人に酒造人が見え、百姓・吉田市右衛門のように農業以外にも収入があったようです。
宗派・檀那は江戸時代、宗門人別帳における記載事項第一ですが、奉公する場合には奉公人請状(労働契約書)にも書く必要がありました。
参考文献
- 林英夫 監修『音訓引き古文書字典』(柏書房、2004年)
- 『角川日本地名大辞典11 埼玉県』(角川書店、1991年)「上野村」132頁
史料情報
- ① 武蔵国入間郡平山村宗門人別御改帳:埼玉県立文書館所蔵 平山家1309
- ② 同表題:同館所蔵 平山家1313
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