現代語訳
今度の地震にて横死の人民多く、天災とは申しながら不□に思召しにつき、十月二日より左の寺院において施餓鬼(せがき)修行を仰付られた。
- 天台 東叡山学頭 後雲院前大僧正
- 浄土 本所 回向院(えこういん)@墨田区
- 新義真言 芝二本榎 高野山学侶方在番 西南院(さいなんいん)
- 同 麻布白銀老町 同段 人方在番 円満院
- 新義真言 浅草御蔵前 大護院
- 済家(ざいけ:臨済宗) 品川 東海寺@品川区
- 曹洞 あたこ下 青松寺@港区
- 黄檗(おうばく:日本三禅宗の一) 本所五ツ目 羅漢寺@江東区
- 法華□ 下谷 宗延寺@杉並区
- 同勝劣 浅草 慶卯寺
- 西本願寺校所 築地輪番 与楽寺@北区
- 東本願寺校所 浅草輪番 春慶寺@墨田区
- 時宗 浅草 日輪寺院代 洞雲院
一度斎芳綱 画
解説:施餓鬼とは
施餓鬼(せがき)は、餓鬼に飲食する法会(ほうえ)。仏教では、生前に強欲で悪行をはたらいた者は死後に餓鬼道(がきどう)に落ち、つねに飢えと渇きに苦しむ餓鬼となって食物を求めてさまようと説いています。
平安時代以降寺院を中心に行われ、特に戦乱のうちつづいた中世には諸宗の間で死者のための施餓鬼会(せがきえ)が盛んに営まれました。一方で餓鬼の観念は民間の無縁仏と同じような意味で理解されるようになり、また主に盆の期間に施餓鬼が行われました。
史料は、安政の大地震を受けて施餓鬼が行われている様子。くずし字が難しく、わからなかった文字は□、公式HPがある現存のお寺はできる限りリンクを貼りました。
安政見聞誌
福田アジオ 他『知っておきたい日本の年中行事事典』(吉川弘文館、2012年)「八月 2.盆 施餓鬼」135-136頁
史料情報
- 表題:安政見聞誌 上
- 年代:-(江戸時代)/一勇斎国芳・一度斎芳綱・鶯斎国周 画
- 埼玉県立文書館寄託 小室家2743
- 当サイトは同館から掲載許可を頂いています。
- ※無断転載を禁止します。