史料
全体図
安政の大地震後の風景。一見、横十間川(よこじっけんがわ:東京都墨田区・江東区を流れる運河)が流れる、品のいい美しい絵画ですが…
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絵師は「鶯斎国周画」。鶯斎国周(おうさい-くにちか)は、別名 豊原国周とも言い、浮世絵師で三代目歌川豊国の弟子。
横十間川にかかる天神橋であろう橋は一応立っていますが、橋すぐ左上「八百ヤ」含め岸辺の家々はほぼ全壊。文字が小さすぎて見えず、右中央が亀戸天神社(江東区)と推測すると社殿は崩れて、(普通考えてみても)ここだけ無事というわけにはいかなかったようです。
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表題は「亀戸天神橋通、横十間川筋、柳嶋之図」。
史料左奥は大横川を挟んで田畑が広がり、被害は横十間川岸辺ほどではないようです。然しながら、左手前「柳嶋町」(墨田区)あたりの(史料中央下)大きな二階家が倒壊。周りの家々もぺしゃんこになっています。
絵が細かすぎて却ってわかりづらいのですが、早くも路に散らばったものを熊手のようなものでかき集める人、丸太を持って家を立て直そうと人など多々が見受けられます。
全体的に落ち着いた静かな印象を与える絵ですが、目をこらしてみると江戸っ子のたくましい息づかいが聴こえてくるようです。
史料情報
- 表題:安政見聞誌 上
- 年代:-(江戸時代)/一勇斎国芳・一度斎芳綱・鶯斎国周 画
- 埼玉県立文書館寄託 小室家2743
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安政見聞誌
1.概要 2.京橋 3.深川 4.生きた心地なし 5.岡場所