解説
家の目的
日本的な「家」の本来の目的は、家の安泰と家系の保持。
「家」というのは家を支え、家中全員が生存していけるように立ち働く「表」向きの主人と、その主人が表で安心して働けるように家中を守る「奥」(家内)とで成り立ちます。
幕府もしかり。幕府は徳川「家」の組織的拡大で、幕府と公式の儀式の場である「表」と、将軍の日常生活の場である「中奥」に対して「大奥」が存在しました。
男性家長とは
さて江戸時代、士農工商という身分制度がありましたが、一般の家の中にも男性家長を頂点としたピラミッド――身分が存在していました。明治六年 国語の教科書における父母のフォントサイズを見ても明らかです。
男性家長の役目は、家内の営みを統率すること。よって介護の知識や技術は、男性家長中心となって習得。介護はもとより育児も率先して従事。理由は女性は賢くないから、母親だけに任せてられないという考えがあったからです。
かくして家事や子育て、医療、介護などの関する書物は、将来家長になる男性に向けられて書かれています。また印章を持つ者は家長に限ります。
江戸時代の人々の生き甲斐は、家を守ること。よって一家の長とふさわしくない判断された家長は、隠居した父母が当主たる子を勘当。婿養子なら離縁。また家内の者や共同体・同族・親類により強制的に隠居させる、といった方法がとられました。
家における忠孝は、先祖代々継承されてきた家に対するもので、家長個人ではありませんでした。
次男と婿殿の運命
家督は、きほん的にその家の長男が継ぎます。幕府の改革の一つに新田開発がありますが、次男以下はそうした新田村に活路を見出しました。また当時、婿養子にだけはなるな、と言われていたにも関わらず婿殿になってしまった場合、妻と義理の親にいびられました。
参考文献
- 浜垣容二「年寄」『江戸役人役職大事典』(新人物往来社、1995年)58頁
- 大藤修『近世村人のライフサイクル(日本史リブレット)』(山川出版社、2003年)「④ 結婚・相続と家長・主婦の役割」78-81頁