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女大学その10

江戸時代の女性の身分格差

江戸時代の教科書『女大学』から、中等以上の身分でないと実践が難しい女子の教えについて紐解きます。

史料

女大学_江戸時代の女性の身分格差

※無断転載禁止

現代語訳(枠内)

我達女子の教えは、この本・大学に委(くわ)しいけれど平人・下民にはやや遠いものである。

中等以上の身分は人を多く召使い、またそれぞれの師まで選んで教わるから自然と道も覚え、大方、道理に外れた行いがあるのは稀である。しかし中等以上の身分以下に至ってはこのような事はなく、料理と言っても自ら煮炊きからいろいろと行い、その日を営むので男女を隔てる教えすら行き届かない。

それというのもが狭いので、男女の衣類を同じ所に置かないなどの掟も守りにくいからである。しかし貧賤は天命である[]。常にその心得もあれば、万事誤ることはない。たとえ男女が同じ蓆(むしろ)に居たとしても心を固くして、浮かれた心で淫らになることがあってはならない。

女子の深窓(しんそう・家の奥深い所)に養われると言うのは、中等以上の身分のことで卑賤の者はどうして深窓に養われるだろうか。

>>原文(史料解読文)

補註

  • 貧賤は天命である…『論語』顔淵05「富貴は天に在り」

解説

結納婚姻平産の心得と題する史料ですが、冒頭に書かれていることは女性の身分格差。中等以下の身分の女性は生活に追われ、『女大学』の説く女になる為には、中等以上の身分でなければ困難であると述べています。

すなわち女大学は、江戸時代の全ての女子に向けてというよりは、いいとこの娘(コ)向けに書かれていると言えるでしょう。平人・下民の女子は『女大学』より『百姓往来』かもしれません。

明治の教科書『絵入智慧の環』に描かれている、田植えをする「早乙女」しかり、村の労働力において女子の貢献するところ大です。確かに『女大学』をやっている暇はないでしょう。

原文(史料解読文)

結納(ゆひなふ)婚姻(こんいん)平産(へいざん)の心得(こゝろえ)

我達女子(によし)の教(をし)へ方、本文(ほんもん)大学に委(くは)しけれど、平人(へいにん)下(しも)ざまの事には、やゝ遠(とほ)きもあり

仲人(ちゆうにん)以上(いじやう)は、人をも多(おほ)く召仕(めしつか)ひまた、夫(それ)々の師(し)をも選(えら)びて、教(をし)ふるから、自然(しぜん)と道(みち)も覚(おぼ)え、大(おほ)かた背(そむ)けたる行(おこな)いあらは稀(まれ)なれど、

仲人(ちやうにん)以下(いか)に至(いた)りては、然(しか)る事なく、自(みづか)ら、薪炊(しんすゐ)とて煮炊(にたき)を始(はじ)め、何(なに)くれとなく、物(もの)してその日(ひ)を営(いとな)む故に、男女の隔(へたて)だに教(をし)への如(ごと)くには行(ゆき)も届(とゞ)かず、

また家居(とゐ)も狭(せま)くして、男女の衣類(いなゐ)同(おな)じ所(ところ)におかずなどいふ掟(おきて)も守(まも)りがたし、されど貧賤(ひんせん)は天命(てんめい)也、常(つね)にその心得(こゝろも)あれば、万事(ばんじ)にあやまつことなかるべし

縦令(たとへ)、男女同(おな)し蓆(むしろ)に居(を)るとも、心(こゝろ)を固(かた)うして、浮(うた)たる心(こゝろ)ならは、□奔(みだり)なることあるべからず

女子(によし)の深窓(しんそう)に養(やしな)はるといふは、仲人(ちゅうじん)以上(いじやう)の事にて、卑賤(いやしき)のもの争(いかで)か深窓(しんそう)に養(やしな)んや

史料情報

  • 表題:女大学栄文庫
  • 年代:嘉永4. 8.(1851)/宛名:山本平吉
  • 埼玉県立文書館収蔵 小室家文書2342
  • 当サイトは埼玉県立文書館から掲載許可を頂いてます。
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