絵入智慧の環とは
概要
『絵入智慧の環』(えいりちえのわ)は、明治初期の国語の初等教科書。初編から四編までそれぞれ上下巻合わせて全八冊で構成されます。
当サイトで紹介する初編上では、表題のとおり絵入りで変体仮名と漢字を易しく伝えています。江戸時代から続く文化を、父母の書き方・呼び方、月見や雪見、歳時記などの頁で確認できます。
かくして、一五〇年前の教科書として人それぞれ見るべきところがあるでしょう。第一、文字の書き方が現代と大きく違うので、幸か不幸か古文書を学ばれたい方は本書からスタートして、くずし字を学んでいくには非常に有難い教科書です。
著者は古川正雄。天保八年(1837)広島県出身。福沢諭吉の弟子で、慶応義塾大学初代塾長。日本近代教育の礎をきずいた一人です。
大正の人も難しい?
明治五年(1872)学制[註]公布。翌明治六年の教科書が本書、それから五〇年後、文部省図書局長・幣原担(しではら-たいち)が「教育上注意すべき言葉及び文字の変遷」『教育研究』第二五二号(大正一二年(1923)二月一日)における文章は以下のとおり。
「明治七年にできた単語図を見ても、小学校に入りたての子供に、最初に読ませるものであつたに拘(かか)はらず、また今日からすると、何と読んでよいか分からないやうな文字のあるのに驚かされる。国民常用の文字のみを以てしても、半世紀の間にこの通りの変遷がある」[文献1]
明治七年の単語図は具体的にはわかりませんが、本書『絵入智慧の環』の単語を並べた頁を参考になると思います。また、本書くずし字解読にあたっては、本書巻頭にありました変体仮名早見表をご活用ください。
補註:学制とは
学制(がくせい)とは、学校制度の略称。また日本の近代的学校制度を定めるため、明治五年(1872)に公布された法令。男女を問わず国民各自が身を立て、智を開き、産を治めるために学問が必要であるとする、一種の功利主義的教育観に立脚する国民教育の発展につとめた[文献2]。
参考文献
史料情報
- 表題:絵入知慧の環 初編上
- 年代:明治6.5(1873)/古川正雄 著
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書4197
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絵入智慧の環
20. 脱穀