年表
平安時代(王朝文学)→鎌倉時代(平家物語)→南北朝時代(太平記)→下記表参照
文書残存量 | 解読難易度 | 識字 | 文字の書き方 | |
戦国 | 少ない | 難しい | 武士や僧など限られた人のみ読み書きする。 | 戦乱のため、平安時代から続く勅撰和歌集が絶えた上に、平家物語や太平記のような軍記物も生まれなかった。文禄・慶長の役で朝鮮から盗んだ漢籍や印刷技術が江戸時代の文化を促進。 |
江戸 | ↓ | ↓ | 様々な身分の人々が自由に読み書きする。 | くずし字(変体仮名、異体字)が主体。公的文書の文体は候文。伝達手段は口頭から文書中心へ。近松や西鶴、馬琴など文学も華開いた。江戸後期から句点が登場。 |
明治 | ↓ | ↓ | 国が定めた教科書で文字を覚える。 | 変体仮名を廃止して統一字体の平仮名を採用。くずし字を廃止して活字を採用。移行期の例:小学算術書(明治六)。読点、改行が登場。 |
大正~戦前 | ↓ | ↓ | 戦中は学業よりも勤労報国。 | 異体字(旧字)と歴史的仮名遣いを使う。例:夏目漱石、宮沢賢治、太宰治など。 |
戦後 | 多い | 易しい | ほぼ100% | 当用漢字なる謎の字体が現れ、常用漢字に改定。異体字(旧字)と歴史的仮名遣いは捨てた。 |
解説
古文書といっても、様々な時代の文書があり、上の表の通り時代によって文字の書き方が違います。
けだし古文書の書風の変遷は、一般に歴史に伴っていることに注意されたいです。同じ時代のものにあっては、筆法をはじめ共通の書き振りがあって、他の時代のもののそれとはおのずから区別されます[文献]。
さて、古文書初学者はきほん、江戸時代の古文書から入ります。何故かというと、戦乱がなかった江戸時代には比較的多くの古文書が残っているから。また明治時代に入るとくずし字で書くことが少なくなってくるので、この時代の文書は異体字(旧字)が読めれば、それほど訓練を積まなくても読めます。
戦国時代まで遡ると、この時代は文字が書ける人も身分の高い人・公家や武士、あるいは僧に限られ、おまけに多くの文書が戦禍によって焼失。これにより戦国時代は江戸時代と比べ、現在まで残っている古文書は圧倒的に少ないです。以上の理由から、当サイトでも主に江戸時代の古文書でくずし字を学んでいきます。
参考文献
伊木壽一『日本古文書学』(雄山閣出版、第三版1990年)「第七章 書風・墨色」133-135頁