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荻生徂徠『政談』15

江戸時代の装束は何でもOK?!

衣服の制度がない江戸時代

徂徠によると、江戸時代の人々の衣服は制度で定められているわけではなく、風俗により自然発生したようです。どういうことでしょうか?引き続き徂徠の政談を見ていきましょう。

今の格式はタダの風俗

「今の世にも大抵、それぞれに格式があるので、物の道理を知らない人は、制度があるように思っているけれども、今の世にある格式というようなものは、古より伝わる礼ではない。

また上より厳しく立たせられた決まりでもない。その中には上から時々に命令されたものもあるが、何れも皆、世の風俗から自然に出来たことで、世の風俗が移り行けば、その風とともにその格式と言うようなものも移り行く。」

衣服で上下の見分けはつかない

「衣服の制度がある時は、これは大名、これは大役・高官の人ということが、座敷の中でも自ずと知ることができるので、人々は貴きを敬い、礼儀を自ら乱すことはない。

然るに現在のごときは、上は天皇より下は百姓・町人までも、何れも小袖を着て、麻上下(かみしも)を着ることにして、その衣服の生地も金さえあれば何を着ても誰も制する人がいない。

上下の見分けがないので、高官・大役の人も下の者と差別の立てようがなく、各々がいかめしい体をして、これで高下を分けるのである。

このような振舞いは、我が身の君子の礼儀を失うことになるのを知らない。お役人・奉行などもの無礼はひどくなり、下の者は礼に過ぎて、必要以上に屈(かが)み、へつらう風俗が甚だしいのは制度がないからである。」

綱吉公のご講釈の際のエピソード

「五代将軍・綱吉公の周易ご講釈の拝聞を仰せ付けられ、私なども登城してご講釈の坐に列した時、つらつらと傍らを見廻すと、御老中も若老中も、大名も、御旗本も、有官無官ともに私どもの衣服と何の変わりがない。

これを見て、余りのことに涙がこぼれて茫然となった。とかく金さえあれば、賤しき民も大名のようにしても、何のお咎めもない。」

倫理崩壊

「ただ悲しいのは、金を持たず、見栄え悪ければ、高位・有徳の人も自ずと肩身がすぼまって人に蹴落とされる今の世界である。これにより、人々は己が勝つ為に奢りをして人に勝ろうとする。

それをまた見よう見真似に己を立派だとしようしようと思うから、世間は次第に奢るようになり、その奢りは長い年月が経てば自ずと風俗となり、その中に成長する人はこれを奢りということも知らず、ただ有害あるべきと思うことだ。」

画像の答え

というわけで画像の人物の身分は、刀二本差しているので武士だと思いますが、正確なことは本人しかわからないということでよろしく。

  

政談の現代語訳について

当サイトの政談の現代語訳は、吉川 幸次郎, 丸山 真男, 西田 太一郎, 辻 達也 (著)『日本思想大系〈36〉荻生徂徠 (1973年) 』(岩波書店、1973年)をもとに当サイトの運営者が現代語訳しました。

その際、荻生 徂徠 (著), 尾藤 正英 (翻訳)『荻生徂徠「政談」 (講談社学術文庫) 』(講談社、2013年)も参考にさせていただきました。

荻生徂徠『政談』

1.荻生徂徠とは/2.『政談』とは/3.武士の正規・非正規雇用/4.武士の江戸暮らし/5.武士の貧困

6.江戸の医者/7.国替を命じる理由/8.外様と譜代の違い/9.国の困窮/10.歴史に学ぶ大切さ

11.貧困問題の解決策/12.奇妙な?経済活動/13.スピード社会/14.江戸の物づくり

15.江戸時代の装束/16.上に立つ者の品格/17.代官とは/18.御徒・与力とは/19.人の器とは

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