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荻生徂徠『政談』19

人の器とは

人の器

器のある人、器量のある人とはどんな人のことを言うでしょうか?引き続き徂徠の『政談』から見てみましょう。

癖のある人に勝れている人がある

「大概、癖のある人に勝れている人がある。 これは癖ある人が必ず勝れている人と言うことではなく、一癖ある者に勝れた人が多いということだ。

これにより面魂(つらだましい・並々ならぬ強い精神が顔に現れている)に一癖あるからと言って、 このような人を名将として珍重したことは多い。 聖人の書には、これを器と言っている。 」

器とは?

「器と言うものは、たとえば槍は突くことばかりで、切ることはできない。 刀は切ることばかりで、突くことに向かない。 錐(きり・板などに穴をあける工具)は尖って、鎚(つち・かなづち)の役にならならい。 鎚は、鈍くて錐の役にならない。

総じて刃物は、鞘(さや)に入れて置かねば大きな怪我をするが、すなわち、それが癖である。

その刀の鞘がなくて怪我をせず錐のあて傷をつけず、と言うのはみな、癖がないということで、 その代わりに何の用にも立たないものであるが、しかしその癖というものが、すなわち器である。」

「器でなければ、役に立たないものである。人もこのようなものだ。 よって、人の才能・知恵が人によって異なりがあることを器という。

人に器量と言うのも、この文字である。これは人の才智は様々なので、 これを使って役に立てることは、前に言った「和して同せず」と言う道理にもかなったことである。」

万能丸より一つの器量

「しかし世が末になるにしたがって、上たる人の器量は小さくなったので、 物を気遣う小気な心が強く、一癖ある人のなかで、才智ある人を採用することを知らない。

毒にも薬にもならない人を好み、万能丸のような人を 本物の賢才と心得て、このような人を探している。けれど、古よりこのような人はいないので、今の世にも見当たらなければ、善人はないということになる。

万能丸のような人は、皆、根入(ねいり・柱の根の地中に埋め込んだ部分)が薄い人だが、 しかし方々へよく合わせ、誰にも善人と思われる者である。

これは孔子が言われた郷愿(きょうげん(論語[陽貨])・善良を装い、郷中の好評を得ようとつとめる小人。 )という者にあたり、何の用にも立たないことを知るべきだ。

ゆえに賢才というのは、一つの器量がある人を言って、このような人は、一癖ある人の内に多くあるものなり、 とよく考えて、その人を役目に適合させるように使い込む時、本当の賢才を現すのだ。 」

  

政談の現代語訳について

当サイトの政談の現代語訳は、吉川 幸次郎, 丸山 真男, 西田 太一郎, 辻 達也 (著)『日本思想大系〈36〉荻生徂徠 (1973年) 』(岩波書店、1973年)をもとに当サイトの運営者が現代語訳しました。

その際、荻生 徂徠 (著), 尾藤 正英 (翻訳)『荻生徂徠「政談」 (講談社学術文庫) 』(講談社、2013年)も参考にさせていただきました。

荻生徂徠・政談

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