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荻生徂徠『政談』9

江戸時代の国の困窮、貧困問題

管仲と孔子

荻生徂徠政談』から、江戸時代の貧困問題や経済問題についてみてみましょう。

荻生徂徠『政談』巻之二

1.上から下まで困窮

「太平久しく続く時はだんだんに上下困窮し、そうして綱紀乱れて終(つい)に乱を生ず。

日本中国、古今共に治世より乱世に移ることは、皆世の困窮より出ること、歴史はしるし[1](実証し)、鑑みても明らかである。

故に国家天下を治めるには、まず富(とみ)豊かなる様にすること、これ政治の根本である。管仲(春秋時代、斉の宰相)が「衣食足リテ栄辱(名誉と恥辱)ヲ知ル(『史記』管晏列伝)」と言い、孔子も「富ニシテ後教ル[2]」と最もである。

暮らし困窮して食たらざれば、儀を嗜(たしな)む心がなくなる。下に礼儀なければ、種々の悪事はこれよりして生じ、国遂に乱れることは自然の道理である。」

「所詮は皆困窮により生ず。国の困窮するは病人の元気尽きるが如し。元気尽きれば死すること必然の理なり。」

2.金を出せばいいってもんじゃない

「さればその困窮を救う道は如何にと言うに、愚なる輩はただ上の御救い御救いばかり言って、金銀等を賜るを御救いと思って居れども[3]、御蔵のを悉く出払いあって御救いなされても、また跡より元の如く成るべし。されば幕府の御力とて及ばないだろう。」

  

補註

『論語』篇名 文章番号

  1. しるし…八佾09「夏の(れい)は吾能く之れを言へども、紀は徴(しるし)とするに足らざるなり。」
  2. 富ニシテ後教ル…子路09「既に富めり。又何をか加へん。曰く、之れを教へん。」
  3. 愚かな輩は…里仁11「君子は刑(法則)を懐(おも)ひ、小人は恵を懐ふ。」

参考文献

現代語訳について

当頁『政談』は、辻達也 校注「政談」『日本思想大系〈36〉荻生徂徠』(岩波書店、1973年)をもとに当サイト運営者が現代語訳。直訳を心掛けた。

その際、尾藤正英 (翻訳)『荻生徂徠「政談」』(講談社、2013年)も参考にした。

補註について

補註は当サイト独自に平岡武夫『全釈漢文大系 第一巻 論語』(集英社, 1980年 )を参照して附した。

政談

1.荻生徂徠とは 2.『政談』とは 3.武士の正規・非正規 4.武士の暮らし 5.武士の貧困

6.医者 7.国替 8.外様と譜代 9.国の困窮 10.歴史に学ぶ 11.貧困の解決策 12.経済活動

13.スピード社会 14.物づくり 15.衣服 16.品格 17.代官 18.御徒・与力 19.人材登用

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