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荻生徂徠『政談』4

江戸時代の武士は旅宿暮らし

知行所から御城下に住むようになった武家_江戸時代

江戸時代の武士は実際、どのようなところで、どのような暮らしをしていたのか。荻生徂徠政談』を通して見てみましょう。

荻生徂徠『政談』巻之一

1.武家は旅宿暮らし

「武家が御城下に集まり居るは、旅行中の宿屋住まいである。

諸大名の家来も、その城下に居るを江戸に対して在所とはいえども、これまた己の知行所でなければ旅宿である。その子細は、食住を始め箸一本も買調えねばならぬゆえ旅宿だ。

故(ゆえ)に武家を御城下に差置く時は、一年の知行米を売払って、それにて物を買調え、一年中に遣いきる故、精を出して上へ奉公は皆御城下の町人の為に成る。

これにより御城下の町人盛んになり、(交通・通信の発達に伴い)世界次第に縮まり、物の値段次第に高く成って、武家の困窮、今に至っては最早(もはや)すべき様も無くなった。」

2.パラダイス田舎

「さてまた田舎の取り締まりがなくなったのも、甚だ悪い。田舎の締りと云うは、昔は田舎のあちこちに武家満ち満ちたれば、百姓も我儘ならず[]。百年以来地頭が知行所に住まざる故、頭を押さえる者無く、百姓殊の外に我儘に成った。

旗本の武士小身なれば、自身(知行所に)住まずに江戸より知行所の支配することならず。代官など遣わしても、小身者の家来や、若党風情の者なれば、何の用にも立たず。(御旗本たちの)私領も幕府が治める様に成って、いよいよ地頭を軽んずことに今は成った。」

補註

  • 田舎の締りと云うは…『論語』子路04「上(かみ)を好めば、則ち民は敢えて服せざること無し。」

参考文献

現代語訳について

当頁『政談』は、辻達也 校注「政談」『日本思想大系〈36〉荻生徂徠』(岩波書店、1973年)をもとに当サイト運営者が現代語訳。徂徠節を尊重し、直訳を心掛けた。また、尾藤正英(翻訳)『荻生徂徠「政談」』(講談社、2013年)も参考にした。

政談 目次

1.荻生徂徠 2.本書概要 3.武士の非正規 4.旅宿暮らし

5.武士の貧困 6.医者 7.国替 8.外様譜代 9.国の困窮

10.歴史に学ぶ 11.貧困解決策 12.経済活動 13.スピード社会

14.物作り 15.衣服 16.品格 17.代官 18.御徒与力 19.人材登用

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