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旅行用心集1

旅行用心集とは 現代人が見たこともない旅

江戸時代の旅行マニュアル『旅行用心集』の概要と、著者の意図、時代背景などについて解説します。

史料

表紙、扉、巻頭

表紙、扉、巻頭_旅行用心集

※無断転載禁止

表紙:旅行要/扉:文化七年庚午秋開彫 旅行用心集 全/巻頭:春燕五十三駅、秋鴻七十二程[1]

旅行用心集とは

概要

『旅行用心集』は、八隅蘆庵(やすみ-ろあん)著の江戸時代の旅行マニュアル[2]。旅の心得遭遇する危険な虫荷物、諸国の温泉などを絵入りで紹介しています。

四方の国へ旅した著者

刊行の経緯について自序(史料 扉)に「夫(それ)人々家業の暇(いとま)に伊勢参宮に旅立ちする」。私(蘆庵)が「若きより旅行を好んで四方の国へ」杖を手に歩いた。

これを知った友人が「春秋旅立する毎(こと)に」道案内を請うので「度々是彼(これかれ)認(した)め」たけれど「近頃は年老(をひ)て」その都度に筆を取って、その求めに応じるもしんどくなった。

かくして「是迄人々に認(したゝ)め遣(つかわ)したるを集め、其上にて旅の助けに成べく」いろいろを「我思ひ出るに任せて出」して小冊とした。

時代背景

さて、ふつう村人年貢納入のため日々農事に従事。蘆庵のような「若きより旅行を好んで四方の国へ」旅立ち、これを友人にアドバイス。果ては北国のソリ雪かき道具などを記すなどは教養なくしてならず。詳しくは代参講に譲りますが、必ずしも当時の一般的な人間の型ではありません。

けだし現代は世界中、比較的均質な生活をしています。しかし江戸時代は「国」が変われば鷹場村のようにも違ったりします。且また当時はインターネットなどありませんから、逆に今以上に予め行き先の国の情報を得ないと難儀することもあったようです。詳しくは頭巾の頁を参照のこと。

優れた草双紙

そうとくれば現代とは、旅の仕方や心得は勿論、宿側の対応もだいぶ違ってきます。そうしたズレから、本書は噴き出してしまう所も結構あること以上に出て、旅の事柄に関して具体的且つわかりやすく、最も優れている草双紙(江戸時代の絵入りの読み物)の一だと思います。

新幹線や飛行機、あるいはネットのない時代の方が、旅が面白そう、とうやらましくなるくらいには――

補註

註1

  • 巻頭次頁は東海道 木曽路(中山道)。春燕五十三駅は、春の酒宴を楽しむ(東海道)五十三次。
  • 秋鴻七十二程は、秋の広大な(中山道)七十二次の道程。中山道は六九宿であるが、七十二候(二十四節気の各気をさらに三候に細分した季節の区分)になぞらえ、実数ではなく七十二程と表現したカ。

註2

  • そもそも旅とは『漢語辞典』によれば一義的に軍隊、いくさ、二的にたび、たびをするの意。
  • 『論語』八佾06「李氏(きし)泰山に旅す」の旅は、臨時の大きな祭祀の一種の意。の定めでは封国内の名山大川を祭るのは、国君がなすことであり、李氏ら卿大夫のなすべきことでなかった。

史料情報

  • 表題:旅行用心集
  • 年代:文化7(1810)/出所:八隅芦庵/宛所:須原屋伊八外/形態:竪帳
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3361
  • 当サイトは埼玉県立文書館から掲載許可を頂いてます。
  • ※無断転載を禁止します。

旅行用心集

1.概要 2.東海道 木曽路・3.そのⅡ 4.旅の前日 5.持ち物

6.チェックイン・7.アウト 8.食べ物 9.毒虫 10.ソリ

11.雪かき道具 12.頭巾、帽子 13.履物・14.かんじき、下駄

15.足ツボ 16.必需品 17.スーツケース 18.日記の書き方

19.天気予報 20.白澤 21.旧国名地図

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