最初の職業作家
弥次さん喜多さんでお馴染みの『東海道中膝栗毛』(初編から八編、享和二(1802)-文化6(1809))。近世の小説(草双紙)は変体仮名で書かれており、私は変体仮名が苦手だったので抵抗がありましたが、『膝栗毛』が面白いからでしょうか。なんとか読み進めることができました。
『膝栗毛』は伊勢参宮道中の滑稽談で、現代でも通じるギャグで笑いを誘います。私が解読した部分[文献2]は旅の途中、弥次さん喜多さんは安部川で商売やっている人に思いっきり騙され、お金取られていました。
『膝栗毛』の作者はご存じ、十返舎一九(じっぺんしゃいっく:明和二(1765)-天保二(1831))。父母の名は明らかでありませんが、駿河(静岡)の千人同心の家に生まれたという説が有力。
大坂へ行き武家奉公してましたがこれを辞して、作家業に足を踏み入れました。江戸へ下り友人が増えると、遊郭へも足を踏み入れました。これが遠因で離婚し、一念発起して三八歳の時に『膝栗毛』初編を刊行。
こうして一九は曲亭馬琴と共に執筆料だけで生活を維持した、最初の職業作家となりました。売れっ子になる前はイラストの仕事もしていて、『膝栗毛』の挿絵も自分で描いてます。これがまたお上手。天保二年(1831)八月、六七歳で没しました。
参考文献
- 国史大辞典編集委員会編『国史大辞典 (6)』(吉川弘文館、1985年)
- 藤實久美子「東海道中膝栗毛」三省堂編『古文書を読む 解説ノート16号』(日本放送協会学園、2007年)46-50頁