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旅行用心集11

雪かき道具のコウ鋤(すき)、雪踏み

江戸時代の雪国で使われていた道具について『旅行用心集』から紐解きます。

史料

雪かき道具_旅行用心集

※無断転載禁止

解読文

カウスキ

ブナといふ木にて作、外ニ長柄あり、是は八九ヨあり

此かう(すき)は、雪を屋根よりおろし、又はおろしたる所の雪を切石(きりいし)の如くこの筐をもつてきり、町の中ほとへ向ふの見へぬ計りにつみ上るなり

又大雪の日には、道を掃ふにもし途中(とちう)杖のかわりにするなり、又小児外にて戯(たわむ)れ遊ふにも、雪有うちは是を突(つき)ありく也

雪踏(ゆきふみ)

藁(わら)にて作(つく)り、ふん込(ごみ)の如く両へはき、雪のふる度々家の前并に道路の雪をふみかため、往来の通路をつくる也、又の空(あき)を用る所もあり

同上

是は、わらの雪踏にて、ふみならしたる上を又ふみかたむる具なり、わり槙にて作るなり、かならず家毎にあるにもあらず

解説

用語

  • 八九ヨ:2.4m~2.7m以上
  • かう:コウ鋤(すき)
  • 前并に:前並びに
  • 寉乱(かくらん):夏に起きやすい、激しい吐き気・下痢などを伴う急性の病気

MEMO

旅行用心集』では、奥州・越後の寒い国についての文脈の中でソリに続き、雪かき道具を紹介。シンプルながらも雪国の生活の奥行さを感じる道具です。

著者曰くかんじきの頁において「是等旅具にあらざれとも雪国のみの物故出也」。かくして本書は旅行マニュアルを超えて文化人類学の様相です。

史料情報

  • 表題:旅行用心集/文化7(1810)
  • 八隅芦庵 著、彫工:佐脇庄兵衛・同 伊三郎、出版元:須原屋茂兵衛・須原屋伊八
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3361
  • 当サイトは同館から掲載許可を頂いてます。
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旅行用心集

1.概要 2.東海道 木曽路・3.そのⅡ 4.旅の前日 5.持ち物

6.チェックイン・7.アウト 8.食べ物 9.毒虫 10.ソリ

11.雪かき道具 12.頭巾、帽子 13.履物・14.かんじき、下駄

15.足ツボ 16.必需品 17.スーツケース 18.日記の書き方

19.天気予報 20.白澤 21.旧国名地図

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