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旅行用心集その8

馬、駕籠、人足の手配

史料と解読文/前半

馬、駕籠、人足の手配_旅行用心集

※無断転載禁止

解読文(枠内)

一 道中(たうちう)初てする輩(ともから)、馬(むま)・駕籠(かこ)・人足(にんそく)の用あらば、宵(よひ)の中(うち)に亭主(ていしゆ)にあひて頼むべし

相たひにては、途中(とちう)にてこまる事あり、帳面(ちやうめん)ある人は、着(ちやく)したる時、宿のものへ渡(わた)し頼むへし

扨(さて)、明朝(めうてふ)何時(なんどき)出立(しゅつたつ)と宵(よひ)より宿人申付、其(その)刻限(こくげん)に応(おほ)じ、其間(そのま)にあふ程(ほと)に自(みつから)起(おき)、

若(もし)、宿屋(やとや)不起時(おきざるとき)は、宿(やと)を起(おこ)し、膳(ぜん)の用意(ようゐ)する迄(まて)に、支度(したく)をいたし、

草鞋(わらし)をはく計(はかり)にして膳(せん)に向(むか)ふべし

さなければ、人馬(にんば)の用意も自然(しぜん)と等閉(なをざり)になりて手間取(てまとり)、都合(つかう)あしきなり

旅(たひ)にては、貴賎(きせん)ともに此法(このほう)を守(まも)らされば、手廻(てまは)し悪(あし)しと知(しる)へし

現代語訳

旅行が初めての人々は、馬や駕籠や荷物を運んでくれる人が必要なら、宵のうちに宿の主人に頼むこと。直接、その仕事に従事している者に頼むと途中でもめるものだ。

宿の人に上記のことを頼む場合、帳面を持っている人は、行きたい場所の到着時刻を宿の者へ渡して頼むといい。

さて、明日は何時出発と、宵のうちに宿の主人に申付け、その時間に合わせて自ら起床すること。

もし宿の主人が起きていない時は、主人を起こし、膳ができる迄に支度をして、草鞋(わらじ)を履くだけにして、膳に向うこと。そうしないと、人や馬の用意も自然といい加減になり、都合が悪いものだ。

旅にては、貴賎ともにこの決まりを守らなければ、備えが悪いことを知っておくこと。

用語解説

相対(あいたい):当事者同士が直接対談のうえ決めること。相互に対談して合意すること。双方が納得すること。

等閉(とうかん、なおざり):おろそか、手落ち、いい加減。

このくずし字に注目

人足 頼む 明朝
人足 頼む 明朝
にんそく たのむ めいてい
人足とは、荷物の運搬など力仕事に従事する労働者のことです。 「頼」の左側のつくり、頁(おおがい)は「類」も「頭」もこの様にくずします。 「明」も「朝」も古文書でよく出てくるのですが、とても難読です。
用意 守
用意
ようい まもる
「用」の左側の縦の棒を書かないのが「用」のくずし字の特徴です。 「守」のくずし字は「寺」のくずし字と非常に似てたりします。

解説

史料は旅行用心集・道中用心六十一ヶ条の第四条に当たります。ちょっと長い文章ですが、旅行中の馬や駕籠や人の手配と、朝の準備について記しています。

史料を読むと「馬や駕籠や人の手配については宿の主人に頼んで置くこと」とあり、江戸時代の宿の主人っていろいろと面倒見てくれるんだなあと思いきや、

「朝、宿の主人が起きていないことがあったら、起こせ!」

とも記してあります(笑)。現代の宿というかホテルなどでは考えられませんが、江戸時代の宿にはこんなことがあるんですね。のんびりしてますね~。

  

史料情報

  • 表題:旅行用心集
  • 年代:文化 7(1869)/出所:八隅芦庵/宛所:須原屋伊八外/形態:竪帳
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書3361
  • 当サイトは埼玉県立文書館から掲載許可を頂いてます。
  • ※無断転載を禁止します。

旅行用心集

1.旅行用心集とは/2.東海道、木曽路Ⅰ/3.東海道、木曽路Ⅱ/4.旅の前日/5.持ち物について

6.宿の確認事項/7.毒虫にはご用心/8.馬、駕籠などの手配/9.夏の食べ物/10.ソリの種類

11.雪かきの道具/12.頭巾や帽子/13.履き物その1/14.履き物その2/15.白澤の図/16.旧国名・日本地図

17.足のツボ/18.旅行用バッグ/19.旅行の持ち物/20.日記の書き方/21.天気予報

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