解読文
原文
- 一 新田場二而、極困窮村二御座候
- 一 尾州様御場内二而、人足[註1]并御伝馬[註2]相勤申候、其外助郷[註3]無御座候
- 一 農業之間男者江戸へ薪を売、女稼無御座候
- 一 市場・町場二者無御座入家[註4]二御座候
- 一 草刈[註5]場無御座候、百姓持地二而草刈申候
- 一 御林[註6]無御座候
- 一 米津出場[註7]無御座候、金納村二御座候
- 一 浜猟場無御座候
- 一 運上水車弐ヶ所
- 一 川除[註8]并大立候普請無御座候
現代語訳
当村は、新しく開墾されたばかりの場所なので、大変困窮しています。
尾張藩鷹場として、必要な人や馬を尾張藩の役人に提供する御用を勤めています。農作業の合間に男性が江戸へ薪を売ったり、女性も小遣い稼ぎなどをして、農作業をおろそかにするようなことはしていません。当村は、市場や町場へ養子縁組を行っていません。
肥料や飼料などに草を刈る公共の場はなく、百姓は自分の土地で肥料や飼料を取っています。幕府や領主が直接管理している山林はありません。米を保管する場所はなく、金納の村です。漁猟に適した浜辺はありません。運上水車が二つあります。水を防ぐための堤防工事や、治水工事の仕事はありません。
解説
補註
- 人足(にんそく):荷物の運搬や普請などに従事した労働者。
- 伝馬(てんま):街道の宿駅で公用に供した乗り継ぎ用の馬。
- 助郷(すけごう):宿場に常備する人馬が不足した場合に、近郷(きんごう)の村々に人馬を負担させる制度。
- 入家(にゅうか):養子縁組などによって他家の籍にはいること。
- 草刈(くさかり):肥料や飼料などに草を刈ること。
- 御林(おはやし):幕府や領主が直接管理・保護する山林。
- 津出場(つだしば):米を保管する場所。
- 川除(かわよけ):洪水を防ぐための堤防工事や、治水工事。
概要
史料冒頭に「極困窮村二御座候」とあり、吉田市右衛門文書にもこの記述が見えます。理由は重い年貢を課せられては困るので、村の智恵で、あえて困窮をアピールするのです。
当村は、鷹場として尾張藩、年貢納入先として幕府の、二重支配を受けていました。従って明細帳提出先である代官・小野田三郎右衛門御役所には、尾張藩鷹場であることを比較的最初の方で伝えています。
これ以降は聞きなれない言葉も多いですが、村明細帳らしい記述が並びます。箇条書きで村に在るモノはもちろん、「無御座」モノまで伝えます。
史料情報
- 小平市立図書館所蔵 當間家文書『村方銘細帳』(D-4-4)
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村明細帳
4.鷹場、御林、水車 5.圦樋、城跡、御巣鷹山