講とは
講とは、中世から今日に至るまで存在した宗教的・経済的な共同組織のこと。
元々は仏教の経典を講義する法会(ほうえ)の儀式でした。しかし、それが次第に社寺信仰行事と、それを担う集団を指すものとなり、さらにその成員の経済的共済を目的とする組織をも意味するになったといいます。
講・無尽(むじん)・頼母子(たのもし)の名称はいずれも同義に用いられ、貨幣または財物や労力を、あわせあって共同で融通しあうものを示すようになりました。
経済的講
講は経済的講と信仰的講に大別され、前者は無尽とは、後者は以下をご参照ください。
信仰的講
信仰的講を大別すると三つ。1.寺院内で学僧が集まって経典を講ずる最勝(さいしょう)講、仁王講など。2.村落内で集まり、祝宴や娯楽の場である恵比寿講や庚申講など。3.伊勢講に代表される代参講などがある。
① 恵比須講
恵比須講(えびすこう)は、商家で商売繁昌を祝福して恵比須を祭ること。親類・知人を招いて祝宴を開く。旧暦一一月二〇日に行う地方が多い。中世末に始まり、江戸時代に盛行。
文化七年 無尽定[文献]によれば、毎年十一月二十日が集会日で、会合費の酒肴代は金一両一分。同文書の他の箇所には全部で十口、一口毎回金五両とあり、二~五人でひと口を乗り合っている例もあるという。
② 庚申講
庚申講(こうしんこう)は、庚申(かのえさる)の日の夜に、飲食して徹夜。社交、娯楽の場であるとともに庚申無尽のような金融組織にもなりました。
庚申の日は六〇日に一度回ってくるので、定期的に集まることになり、家の主人などが出席して、農産物の豊穣を祈る信仰ともなっていた。
③ 代参講
代参講(だいさんこう)は、有名な社寺に参詣するため、講金を集め、くじ引きで代表者数名ずつを順次送り出す宗教講。伊勢講、熊野講、成田講などがあります。
伊勢講
伊勢講(いせこう)は、伊勢神宮の参拝を目的に集まった講。必要な旅費を積み立てて交代で参詣します。
伊勢講は村全体の組織になる場合が多く、参加者は家長がほとんど。主にくじ引きで、数人の代表者を選ぶ代参形式。多くは毎月、日を決めて、講宿に参集し神事を行い、そのあとで直会(なおらい)の酒食を摂りました。
代参は、多く春先の農事始めの前か秋の収穫作業完了後の農産期に施行。代表者の出発に際しては、講中が伊勢講宿に集まってデタチの祝いをしました。一生に一度は必ず伊勢参りをしたいと念願する庶民は少なくなく、伊勢から帰省のときにも、村中が村境まで出迎えました。
④ 女性の講
子安講(こやすこう)
東日本には婦人が集まって子安様(安産子育ての神)を信仰しているところがあり、月の十九日に集まるため、十九夜講、十九夜様と呼ばれています。
念仏講(ねんぶつこう)
主に高齢女性中心。毎月当番の家に集まり、念仏の練習をしたり、積み立ての掛け金は会食や葬儀に当てます。
参考文献
- 日本歴史大辞典編集委員会編『日本歴史大辞典 第4巻 くーこ』(河出書房新社、1985年)
- 北原進『独習 江戸時代の古文書
』(雄山閣、2002年)