無尽とは
無尽(むじん)とは、中世から近世を通じて発達した金融組織。頼母子(たのもし)と同義に使用されることもあり、講(こう)が組織されて運用されることが多いです。
無尽の最も簡単素朴な方法は、一定数の講員が毎月定額の掛け金を持ち寄り、くじを引いて当たった者が借り受け、順次借りられるように一巡しました。
歴史
頼母子は鎌倉時代、主として貧困層のあいだに、米や銭を持ち寄って、互いに無利息・無担保で融通しあう組織でした。しかし落札して金銭を給付されたあと、掛け金を怠るものが出てきたので、しだいに利息や担保を取るようになりました。
室町時代に入り、土倉・質屋が担保を取り、利息を徴(しる)して同じ仕組みを行い、これを無尽と称したところから、頼母子も無尽と呼ばれるようになりました。江戸時代には、主として関西では頼母子、関東では無尽と称される傾向にありますが、明確に地域的区分はできません。
方法
① きほん的な流れ
- 発起人である講親(こうおや)が、仲間である講中(こうちゅう)を募集して一つの講を結成。
- 講運営の円滑化のため、掟や定めを作成。
- 月一回ないし年一回、会合を開き、一口あたり(一人一口と限らない)の掛け金を持ち寄る。
- 初回は講親が、第二回以降後は、抽せん・くじ引きまたは入札によって、講中が各回の掛け金獲得。
- 全口が掛け金を取得したときをもって満会と称し、講を解散する。
② 落札者の義務
落札者は、4.の入札(いれふだ,にゅうさつ)やくじ引きに再び参加する権利を失いますが、掛け金を納める義務は負います。これは講に対する債務の弁済にあたるところから、落札した者に質物の差し入れ、また落札によって受ける金銭の利子支払いを求められます。
③ 抽せんと入札
一般的に抽せん・くじ引きは関東、入札は関西に多いです。抽せん・くじ引きの場合は、落札者は偶然的に決まり、資金を欲していても当たる確率は低いです。
入札の場合は、資金を欲するものが低い入札価格をつければ落札者になりえますが、余り低い入札価格では結果的に高利資金となってしまいます。何れにせよ、庶民が必要とする金銭を合理的に手に入れることは困難でした。
その後
江戸時代
無尽は、江戸時代の村落民にとって必要不可欠の相互救済組織でしたが、一方でこれを契機として、村落内では元利が払いきれず質地を手放す者と、分け前が集中していく村落上層民との間の階層分化に拍車がかかりました。
また、特殊な形態の取退(とりのき)無尽は、一回限りで解散するのもので、射幸性が強く、大規模なものは富籤(とみくじ)の変名として悪用されました。
明治以降
明治以降は、銀行をはじめ各種の近代的な金融機関が発達しましたが、これらの金融機関を利用しえない小商工業者・農家・下級の俸給生活者のあいだには、無人は引き続き盛んに行われ、庶民金融機関のなかで最も親しみやすいものとして、今日に至るまでひろく利用されています。
参考文献
- 堀江保蔵「無尽」『日本歴史大辞典 第9巻』(河出書房新社、1988年)164頁
- 加藤隆・秋谷紀男『金融(日本史小百科-近代)』(東京堂出版、2000年)
- 麻島昭一「無尽」『国史大辞典13』(吉川弘文館、1992年)620 頁
- 鈴木敦子「頼母子」『国史大辞典9 』(吉川弘文館、1979年)279頁