伊勢暦とは
概要
伊勢暦(いせごよみ)は、江戸時代の代表的な暦の一つで、伊勢神宮の神官の藤波(ふじなみ)家が刊行した細長い折本の暦です。御師(おし)が、伊勢詣の土産として御札(御祓大麻:おはらいたいま)に添えて全国的に配りました。
地方暦
地方暦(ちほうれき)とは、中世以降、各地の暦師によってつくられた暦のこと。
暦は朝廷によって編暦、頒布されるのが建前でしたが、朝廷の力が衰えて一方で地方における暦の需要が増加しました。また、漢字が読めない人のために仮名文字を主体とした仮名暦は需要が高く、これを版木に彫って印刷した摺暦(すりごよみ)=版暦(はんれき)が誕生しました。
地方暦の多くは仮名版暦であり、最古の例は鎌倉時代、鎌倉幕府と縁の深い伊豆国三島大社から発行の三島暦(みしまごよみ)です。そののち奈良で南都暦、会津暦、常陸鹿島神宮の鹿島暦が誕生。江戸時代に入ると伊勢暦、江戸暦、仙台暦などが誕生し全国に普及しました。
独特な書体と様式
地方暦は、貞享(きょうほう)改暦(1684)以降、幕府天文方の統制下に置かれ、内容の統一が図られたので伊勢暦と他の地方暦には見た目にも大きな差はありません。
よって伊勢暦を解読できるようになれば、他の地方暦もスラスラ解読できます。然しながら仮名版暦は印刷にあたって、経済的見地から文字の幅を狭くして、多くの日数を彫り込むようにした結果、仮名版暦独特の書体・様式が発生し非常に文字が細かいのが特徴です。それでは早速、次頁から伊勢暦を解読してみましょう。
参考文献
- 岡田芳朗・後藤晶男・伊東和彦・松井吉昭『暦を知る事典』(東京堂出版、2006年)