史料
解読文
文久二年壬戌・立春、七日~九日
原文
立春正月せつ朝五時八分ニ入、日の出ゟ日入迄昼四十三刻半・夜五十六刻半、六ゟ六迄昼四十八刻半余・夜五十一刻余
- 七日 かのえとら たつ/木/-/ふく日つめとりよし
- 八日 かのとう のそく/〃/-/くゑ日たねまきよし
- 九日 みずのえたつ みつ/水/天一天上/きしく大みやう五む日
現代語訳
立春正月節(暦の上で春が始まる日)は朝5時8分に入節。日の出~日入は昼43刻半~夜56刻半。明け六つ(明るくなる時刻)~暮れ六つ(暗くなる時刻)は昼48刻半余~夜51刻余。(時刻はいずれも定時法による百刻法で記載される。)
七日の干支は庚寅(かのえとら)、十二直は建(たつ)、納音の五行は木、復日(ふくにち:その月の五行とその日の五行が重なる。婚礼・葬式などを忌む)、爪切り(新年初めて爪を切る日)は吉。
八日の干支は辛卯(かのとう)、十二直は除(のぞく)、納音の五行は木、凶会日(くえにち:万事に凶)、種まきは吉。
九日の干支は壬辰(みずのえたつ)、十二直は満(みつ)、納音の五行は水、天一天上(てんいちてんじょう)[註]、鬼宿日(きしゅくにち:嫁とりの他は万事に吉)、大明日(だいみょうにち:全ての事に大吉)、五墓日(ごむにち:各人の納音によっては諸事に凶)。
十二直とは
暦日の暦注上段は、その日の干支と十二直(じゅうにちょく)が記されています。十二直の配当で日の吉凶が決まります。これの日の当て方は立春後、最初の寅の日に建が当てられ、翌日から除・満と順番に進みます。
史料(伊勢暦)で確かめてみましょう。まず史料の立春の行を探します。見つかったら、立春の次の行を見ます。史料では七日、庚寅(かのえとら)、建(たつ)とあります。立春後の最初の寅の日に十二直の建が当てられ、翌日八日は除(のぞく)、九日は満(みつ)となっていることが確認できます。
補註
天一天上(てんいちてんじょう):癸巳から戊申(六十干支順位表30~45)までの16日間の称。暦には癸巳の日のみ記載。この期間は、天一神(てんいちじん)は癸巳の日に正北から天に上り、一六に経て己酉の日に再び天から下がる。この神の遊行の際には、その通路にあたるものは祟りをするといわれる。
参考文献
史料情報
- 表題:伊勢暦 天保壬寅元暦 文久2年
- 暦師:山口右兵衛/形態:折本
- 埼玉県立文書館寄託 小室家4031
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