原文(解読文)
麻疹(はしか)軽(かろ)くする法(ほう)
柊(ひいらき)の葉(は)多羅樹葉(たらしゆよう)
一 節分の夜(よ)門にさしたる柊の葉を三十三軒にて一枚づゝもらひあつめ、せんして、はしかせぬ小児(こども)に呑すべし、かろくしてわさわひなし
多羅樹葉一枚とり、麦殿(むきどの)は生れたまゝに はしかして、かせたるのちは、我みなりけり、といふ歌をかき、はしかせぬ小ともの名と年をかきて川に流すへし、かならすかろく余(よ)病もいてす
毒だて:魚るい、鳥るい、竹の子、きの子るい、あぶらげ、すのもの、めんるい、くだもの、なすび、玉子、そらまめ、なたまめ、梅つけ、粕(かす)つけ、 五十日忌へし、伕(つま)さればよどくいでゝ(二字不明)なる、房事(ほうし)は体いむへし
解説
おまじない
史料は麻疹軽くする、方法というより「まじない」と言ったところでしょうか。江戸時代の古文書にはおまじないに関するものが存外多く、当時のカレンダー「伊勢暦」に書かれている事柄は主に方位の吉兆です。
現代は科学的なこと以外は退けらる傾向ですが、おまじないは当時の生活の知恵であり、文化の奥行を感じさせる風流なものが多いです。
史料一行目に「節分の夜、門に刺さっている柊の葉」とあり、昔は節分(特に立春の先日)に柊(ひいらぎ)の小枝に刺した鰯の頭を門口などに立てて邪気を払いました。
麦殿大明神
史料には、はしか絵定番の麦殿(むぎどの)が登場。麦殿は麦殿大明神のことで、麻疹独特の神。。麦と黒豆を食べればはしか除けになるとの俗信がありました。
史料の絵の人間を取り巻く妖怪のような人々は麻疹除けの擬人化。また、はしかを患った際は赤い服を着るといいとされていたので、史料の絵の人物もまた赤い服を身に着けています。
史料情報
- 表題:麻疹軽くする法(はしか絵)
- 年代:文久2. 4(1862)/房種 画、(馬喰四)木屋 板
- 埼玉県立文書館寄託 小室家文書6369-5
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