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はしか絵1

はしか絵とは 幕末の感染症医療と智恵の結集

表_はしか絵の比較

事項 良薬と奇薬 まじない はしか歴史 はしか童子 伊勢の神 美男と赤菊 花魁と禿
史料表題 麻疹養生心得方 麻疹軽くする法 麻疹養生伝 はしか童子退治図 麻疹厄はらひ 痘瘡麻疹水痘 麻疹養生之おしえ
被写体(人) 女1,異人1 男女,医者1 女1 子供1 神1,盗人2 男1,子供2 女2
赤色 髪飾 単衣,帯など 単衣,髪飾 頭巾,単衣 菊,単衣など 着物
擬人化(人) 7 5 1
文字量
麦殿大明神 文書に有 絵に有か
良食(品) 46 20 7 4 36
悪食(品) 41 14 3 6 39 16 24
75日忌 悪し 75日忌
房事 75日忌 同上
入湯 軽症30日、重症50日忌 同上
灸治 50日忌 同上
月代 50日忌 大ひに悪し 50日忌

史料全て年代は文久二年(1862) 四月、 所蔵元は埼玉県立文書館 小室家文書。

解説

概要

はしか絵は、鯰絵と並ぶ江戸時代の代表的な錦絵。

当時の難病中の難病は、疱瘡(ほうそう,天然痘)とはしか(麻疹)で、流行病(はやりやまい)すなわち疫病は、江戸の人々に火事や地震よりも恐れられていました。

はしか絵のほとんどは、幕末の文久二年(1862)のはしか大流行時に大量に作成されました。この大流行に際しては、江戸だけで二六万以上もの死者が出たとも。「疱瘡は器量定め、麻疹(はしか)は命定め」といわれたように、この病気の死亡率はかなり高いのでした。

江戸では、はしかが数十年に一度の割合で大量流行しましたが、庶民は猛威の前では無力で、養生につとめるか、はしか絵を護符として貼っておきました。

内憂外患の幕末にも関わらず、安政二年(1855)の大地震後に大量に作成された鯰絵同様はしか絵も悲壮感はありません。明るい絵柄で、文字情報が多く含まれているのが特徴です。

江戸時代の証文・手形よろしく、はしか絵にもフォーマット?があります。以下にまとめました。

テキスト

  1. はしかの概要まじない良薬歴史戯文など、伝えたいことを分かり易く書く。
  2. 「食してよき物」「食して悪しき物」どちらか、または両方を書く。詳しくは野菜 果物加工食品海産物を参照のこと。麦と黒豆を食べればはしか除けになるとの俗信アリ。
  3. 忌むべき事項である、房事、入湯、灸治、月代(さかやき)の何れか、あるいは全て書く。

  1. はしかを発症させた人(顔に赤の斑点)を一人~二、三人描く。大人子供、男女、職業問わない。
  2. 赤色は疫病神に対して強い呪力があるとされ、これを衣類や周囲に取り入れる。
  3. 麻疹除けの擬人化として、妖怪のような人々を一名~数名描いてもいい。
  4. 麻疹独特の神・麦殿(むぎどの)こと麦殿大明神を描いてもいい。

特徴

以上を実践すれば、自ずと明るい感じになるうえに、個性豊かな作品に仕上がるはず。すなわちこれが、はしか絵の魅力であり魔力?です。

参考文献

花咲一男(監修)「流行病」『大江戸ものしり図鑑』(主婦と生活社、2000年)456-457頁

はしか絵

1.概要 2.良薬と奇薬 3.まじない 4.はしかの歴史

5.はしか童子 6.伊勢の神 7.美男と赤菊 8.花魁と禿

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