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はしか絵7

美男と赤菊

史料

痘瘡麻疹水痘[養生法]

※無断転載禁止

原文(解読文)

疱瘡(ほうそう) 麻疹(はしか) 水瘡(みづいも)

人間一世(にんげんいつしやう)の大厄(たいやく)なれども、其(その)かろきに至(いた)りては、服薬(ふくやく)をも用(もち)ひずして、治(ぢ)する

其中(そのうち)に稍(や)はげしく、熱毒(ねつどく)さかんに腰(あしこし)たゝず人事(じんじ)を失(うしな)ひ夢中(むちう)の如(ごと)くなるも有(あ)り

然(しか)れども、養生(やうじやう)をよく専(もつぱ)らにする人は、第一食物(たいゝちしよくもつ)を用捨(ようしや)して、おのづから全快(ぜんくわい)に至(いた)る

はじめ熱有(ねつあり)と思はゞよく、風(かぜ)にあたらぬやう、蚊帳(かや)又は紙帳(しちやう)を用(もちひ)て、日中(なか)も其内(そのうち)に居(を)るべし

冷(ひやゝ)かなるものを食(しよく)せず、渇(かは)くとも水(みづ)を呑(のむ)こと大(おほひ)にわろし、白(しら)かゆ又は、白湯漬(さゆづけ)寒晒(かんさらし)の粉(こ)、道明寺(どうみやうじ)の粉(こ)など食(しよく)すべし

大人(だいにん)は其心(そのこゝろ)を得(う)れども、幼稚(おさなき)ものは、わきまへもなく、くるしきまゝに夜着(よぎ)をふみぬき手足(てあし)を出(いだ)し冷(さめ)るを、かまはざるものなれば、看病人(かんびやうにん)よく/\心附(こゝろづけ)て、介抱第一(かいほうだいゝち)なり 

食(しよく)して悪(あ)しきもの 

類(とりるい)一切 、一 玉子(たまご)百日いむ、一 青物(あおもの)油物(あぶらけ)は七十五日いむべし 、一 豆腐(とうふ)、 一 こんにやく、一 そら豆(まめ)、一竹(たけ)の子(こ)、 一 餅(もち)、 一 梅(うめ)ぼし、一 (めん)るい・うんどんはよろし 一 梅漬(うめつけ) 、一 柿(かき) 一 (きのこ)るい 一 もみうり、一 茄子(なす)の生漬(なまつけ)百日いむべし

肥立(ひだち)かゝりて怒(はらたつ)ことを忌(いむ)べし、又哀事(かなしむこと)すべて気(き)をつかふ事をまぎらせんと、雑談(はなし)又ハ草双紙(くさぞうし)などよみて、たいくつせぬことよろし

結髪月代(さかやき)を剃(そる)こと、大(おほ)ひにあしく、廿日又は三十日も過(すき)て、ざつと洗足(せんそく)し、髪(かみ)はたばねておき、十日ほど見(み)あはせ、其後(そののち)沐浴(もくよく)髪(かみ)月代(さかやき)してよろし

解説

江戸時代、疱瘡(天然痘)、麻疹(ましん,はしか)、水痘(水ぼうそう)は人生の「お役(やく)三病」とされ、一生に一度しか罹(かか)らないこの三つを無事に終えることが、健康面での最大の願いでした。また種痘が行われるようになるまで、疱瘡は日本人をもっとも長く苦しめた疫病でした。

史料は、お役(やく)三病を患った際の過ごし方について書かれてます。くずし字解読はともかく、活字に置き換えれば文語でありながらも比較的読みやすい内容。

史料の絵は、美男が右手に赤い、左手に鋏を持ち剪定(せんてい)。膝元には黄色い菊が置かれ、当錦絵全体の調和を取るように腰に絞めている帯も赤。手前の子供二人は顔に赤い斑点の症状あり、また赤い半纏(はんてん)や単衣(ひとえ)を着用。痘鬼が赤色を嫌うとことから、衣類や周囲に赤を取り入れます。

参考文献

史料情報

  • 表題:痘瘡麻疹水痘 [養生法]
  • 年代:文久2. 4(1862)/五雲斎貞秀 画、両国大平 板
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書6369-2
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はしか絵

1.概要 2.良薬と奇薬 3.まじない 4.はしかの歴史

5.はしか童子 6.伊勢の神 7.美男と赤菊 8.花魁と禿

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