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はしか絵8

花魁とかぶろ

史料

麻疹養生之おしえ(はしか絵)

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原文(解読文)

麻疹養生之おしえ

文久壬戌年夏秋、麻疹(はしか)流行(りやうこう)する事、莫大(はくたい)にして家々(いへ/\商買(しやうくかい)を休(やす)み、枕(まくら)を双(ならへ)打(うち)周[カ]こと、いく千人といふかつを知らす、げに人間一世の大厄(たいやく)なり

初日より気分(きぶん)あしくさむけ、づゝう強(つよ)く、ねつきおびたゝしく水を好事(すきこと)しきり、決(けつし)て呑(のま)すべからす、三日位にして、熱(ねつ)を四五日絶食(ぜうしやく)なり、□しんはいするに及ず、十日ヨリ十二日にして全快する也

熱(ねつ)強(つよ)きゆへはら下るともかまひなし、全快(ぜんくわい)の後(のち)は養生(ようしやう)専(せん)一なり、風に吹れぬようにして、かるはづみすへからす、慎(つゝし)み深(ふか)けれは無病(むびやう)長寿(ちやうじゆ)凝(うたがい)なし

食してよき物

・あつき ・さとう ・みそづけ ・しら玉、一 ほしうんどん・かんひやう ・かたくり ・びわ、一 さつまいも ・れんこん ・きりほし ・なかいも、一 とうか ・いんけん ・ふるたくわん ・なし、一 ひじき・あらめ ・こぶ ・ぜんまい ・くわへ、一 にんじん ・はくせつかう ・しろうり ・くす、一 いんげんまめ ・やへなり ・かつをぶし ・ゆりのね 、一 あわび ・きす ・かなかしら ・さより ・むしかれい、魚類は日かず十五日もたちて食はよし

食してあしきもの

一 房事七十五日 ・入湯七十五日 ・灸治七十五日、一 そば七十五日 ・髪月代五十日 ・七十五日 、一 川魚・梅干 ・ごぼう ・唐なす ・茄子瓜、一 そら豆・さといも ・ぬかみそ ・からきもの ・干のり、一 ほうれんそう・ねぎ ・もろこし ・こんにやく、一 しいたけ・なたまめ ・くたもの ・きのこ、一 すのもの ・玉子・かすづけ ・めんるい ・油こきもの一切わろし

解説

史料は他のはしか絵同様、養生の概要および、食してよき物・あしきものをバランスよく記しています。

絵は、はしかを患った花魁と、看病にあたった禿(遊郭の童女)に加え、全快した花魁に対して祝いらしき品を持ってきた麻疹除けの擬人化である小人一人。

それにしても、史料は房事を忌むよう記します。更によくよく考えてみると、はしかの流行で吉原ないし遊郭は営業的に影響を受け、史料が描くような牧歌的な師愛どころでもなかったはず。

しかも頭に無数の簪(かんざし)を付けた病人、大きな髪飾りを付けての看病。現実離れした描写ですが、皮肉なことに花魁と禿へに向けられた温かい眼差しによって、全体的に非常に品のいい作品に仕上がっています。

当時のメディアから言えば、大地震を受けての鯰絵しかり、感染症を受けてのはしか絵しかり、ぽっぱら悲壮感がないのが特徴です。

史料情報

  • 表題:麻疹養生之おしえ(はしか絵)
  • 年代:文久2. 7(1862)/房種 画、(馬喰四)木屋 板
  • 埼玉県立文書館寄託 小室家文書6369-4
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はしか絵

1.概要 2.良薬と奇薬 3.まじない 4.はしかの歴史

5.はしか童子 6.伊勢の神 7.美男と赤菊 8.花魁と禿

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