解読文
原文
琴(こと)・三味線(さみせん)の事
これも女子の嗜(たしな)みなれば、少しは習ひおくべし、あながち此道に心をゆだねて、肝要(かんよう)のわざをおろそかになすは、宜(よろ)しからず
女は、元より内を治(おさ)むるものなり故、みだりに外へ出(いで)ず、さればおのづから気(き)の屈(くつ)し、むすほふるから、折(おり)々とり出してもてあそべは、おのづから心のなぐさみとなる
また女子などもちて、夫(それ)に習はすも其身(そのみ)たえてしらざれば、あぢきなす事もある也
現代語訳
琴・三味線の事
これも女子の嗜(たしな)みであれば、少しは習っておくこと。あながち、この道に心をゆだねて本来の仕事を疎かにするのは宜しくない。
女は元より内を治めるものなので、みだりに外へ出ない。しかしそうしていると自ずから気がめいり、むしゃくしゃするので、折々とり出して手に持って遊べば自ずから心の慰めとなる。
解説
江戸時代の女性のたしなみとして、琴・三味線について説いています。習う背景など、看過できないところがありますが、おうち時間が増えている昨今、ストレス解消法として参考になるかも?
儒教の礼において音楽は肝。『女大学』冒頭で手習いを見ましたが、『論語』(述而06)に「道に志し、徳に拠(よ)り、仁に依(よ)り、芸に游(あそ)ぶ」とあり、儒教においても勉学一辺倒は推奨されていません。
史料情報
- 表題:女大学栄文庫
- 年代:嘉永. 8.(1851)/栄久堂 山本平吉 梓
- 埼玉県立文書館収蔵 小室家文書2342
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女大学
1.概論 2.列女伝 3.近江八景と和歌 4.手習い 5.洗濯 6.お稽古
7.裁縫 8.髪・化粧 9.子育て 10.身分格差 11.音楽活動