解読文
文久二年壬戌・正月一日~三日(青枠)
原文
- 一日 きのえさる あゆふむ/水/吉書始十方くれニ入/はかため、くらひらき、ひめはしめ、きそはしめ、ゆとのはしめ、こしのりそめ万よし
- 二日 きのとのとり なる/水/-/●
- 三日 にほえいぬ おさむ/土/-/馬のりそめ、ふねのりそめ、弓はしめ、あきなひはしめ、すきそめ万よし
現代語訳
一月一日の干支は甲申(きのえさる)、十二直は危(あやぶむ)、納音の五行は水。書始(ふみはじめ)は吉。十方暮(じっぽうぐれ)[註]に入る。(元旦の行事は)歯固(はがため)、蔵開(くらびらき)、姫始(ひめはじめ)、着衣始(きそはじめ)、湯殿始(ゆどのはじめ)、輿の乗初(こしのりぞめ)で吉。
二日の干支は乙酉(きのとのとり)、十二直は成(なる)、納音の五行は水。黒日(くろび:万事に凶)。
三日の干支は丙戌(にほえいぬ)、十二直は収(おさむ)、納音の五行は土。馬の乗初(のりそめ)、船の乗初、弓始め、商い始め、鋤初(すきそめ)は吉。
解説
暦日の暦注
月建記事の次の行から、暦日(れきじつ:暦の上での一日)の暦注(れきちゅう)の記載が始まります。暦注は、暦に記載される日時・方角の吉凶禍福、禁忌等に関する事項。全体は以下四段に分かれます。
- 上段:日付、その日の干支、十二直(じゅうにちょく)。
- 二段目:納音の五行。
- 三段目:特記事項。吉書始、八せんのはしめ(史料では正月末日)など。
- 下段:吉事注。●は受死日(じゅしび)のことで、●で示すので俗に黒日(くろび)と言う。最高の悪日で葬送(そうそう)以外は何もしてはいけないとされる。
元旦行事
以上踏まえ、元旦の暦注を見てみましょう。「はかため…こしのりそめ万よし」は、伊勢暦 元旦暦注の決まり文句。元旦の行事六つが記載されます。
補註
十方暮(じっぽうぐれ):甲申~癸巳(六十干支順位表21~30)の十日間。万事うまくいかず、特に婚姻・遠行(えんこう)・相談は凶。史料の年は元旦早々、たまたま甲申にあたる。
参考文献
史料情報
- 表題:伊勢暦 天保壬寅元暦 文久2年
- 暦師:山口右兵衛/形態:折本
- 埼玉県立文書館寄託 小室家4031
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