解説
概要
引札暦(ひきふだごよみ)とは、カレンダー付の昔の広告のこと。
一般の人が便利な事柄(行事や縁起のいい方角や季節の区分など)をピックアップした暦を略暦(りゃくれき)と言い、略暦に書かれた事柄を暦注(れきちゅう)と言います。階層で示すと、以下のようになります。
- 暦 > 引札暦 > 略暦 > 暦注
史料
史料においては、黒で示された周辺が新暦の、赤で示された中央が旧暦の略暦に当たります。なぜ新暦と旧暦の暦を一緒に掲載しているのでしょうか。
明治五年(1872)に政府は、旧暦から新暦(太陽暦)への改暦を発表。然しながら不定時で暮らしていた当時の人々にとって、新暦(太陽暦)は全く馴染みがありません。かくして史料は苦肉の策で、新暦と旧暦、前代未聞のダブルスタンダードの略暦となってしまったと考えられます。
引札暦は広告で、史料は「呉服・太物(ふともの)類大安売」とあります。絹織物を呉服と言うのに対し、綿織物・麻織物を太物と言います。小川稲荷町は恐らく現在の埼玉県比企郡小川町。
イラストは中華風にして成金趣味丸出しというより、新年を迎えるにあたり縁起を担ぐ意味が込められているのでしょう。大黒天(→甲子待)が上から小判をばらまいている様は、鯰絵に通ずるところがあります。
さて史料黒の箇所は、新暦の引札暦と同じ明治二六年のため、暦注もそれに伴う月日も一致。よって次頁から赤の箇所である旧暦の暦注を見ていきます。明治改暦の暦注と、旧暦の暦注の違いを知ることにより、暦の理解がより深まると思います。
参考文献
岡田芳朗「第四章 暦の種類」『暦を知る事典』(東京堂出版、2006年)148頁
史料情報
- 表題:小川稲荷町 呉服太物類 小島周太郎[引札]
- 明治25年11月/日出版、印刷兼発行者・秋山亦太郎
- 埼玉県立文書館寄託 小室家4827
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引札暦
新暦(太陽暦)
旧暦(太陰暦)
16.旧暦の大小