解読文
原文
一 冬田二水包申間敷候、惣而川殺生年中押通堅仕間敷候事/附、御成筋畑山廻等もや伐抜可申候、勿論大小橋等見廻り、随分丈夫二懸替可仕候事
一 鉄炮所持仕候者無御座候、若鉄炮打候者御座候ハヽ、才覚を以出所承届、早速御注進可仕候事/附、猪・鹿・兎等二至迄為無御免追申間敷候事
一 飼鳥一切仕間敷候、大鳥者不及申、小鳥二至迄巣子一切取申間敷候、若落鳥・落獣御座候ハヽ、早速御注進申上御差図請可申候、隠置後日二露顕仕候ハヽ、何分之越度二茂可被 仰付候事/附、諸鳥一切追立申間敷候事
現代語訳
第四条
冬の田んぼに水を張らないこと。総じて川殺生は年間通じて決してしてはならない。付記:殿様が通る畑山回りの邪魔な小枝や葉を抜いて置くこと。勿論大小橋などを見回り、きちんと丈夫に架け替えて置くこと。
第五条
鉄砲は所持してはならない。もし鉄砲を打つ者がいたならば、機転をもってその出所を見届け、速やかに報告すること。付記:猪、鹿、兔などに至るまで許可なく追い立ててはいけない。
第六条
鳥を一切飼ってはならない。大鳥は言うまでもなく小鳥に至るまで、巣にある雛は一切取ってはいけない。もし落ちている鳥や獣がいたならば、速やかに報告して指図を受けること。隠し置いて後日に露顕したならば、どのような処罰も受けること。付記:諸鳥を一切追い立ててはいけない。
解説
第四条の冬に田に水を張ってはいけない理由は、農閑期は秋~春であり、鷹狩は人の目にも鷹の目にも見通しがきく落葉の時期を過ぎてから行われるからです。鷹の餌になる鶉(うずら)、雁、雉、鴨などが十月頃から春まで各地にやって来ます。
第五条の鉄砲所持禁止について、鷹場内殺生禁止に付きという理由からなのですが、鷹場に限らず日本全国、秀吉の刀狩りの時分から農業を本業とする人は基本的に所持できないはずです。
第六条はほっこりというか特異な条文ですが、生類憐みの令しかり動物愛護の観点からいうと今よりも進んでいるように思えますね。
史料情報
- 小平市立図書館所蔵 當間家文書 M-1-14「御鷹場御法度證文御鑑札御預村〃連卵帳」弘化二巳年正月
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参考文献
- 槇本晶子『尾州藩の鷹場について「多摩のあゆみ第50号」 』(多摩中央信用金庫、1988年)
- 蛭田廣一『小平市小川家文書「尾州様御鷹場御定杭場所書上帳」と尾州鷹場「多摩のあゆみ第50号」 』(多摩中央信用金庫、1988年)
- 小平市中央図書館『小平市史料集二十一集 鷹場1』(小平市教育委員会、1997年)