解読文(史料青枠)
伊勢度会郡山田・山口右兵衛/文久二年みつのえいぬ乃天保壬寅元暦 角宿値年 凡三百八十四日
用語
表題(地名と暦師)
- 伊勢 度会郡(わたらいぐん)山田(やまだ):三重県伊勢市。山田は伊勢神宮(外宮)の門前町。伊勢神宮の御師(おし,おんし)は暦の配布をし、中世以降商人化する者多く、宝暦五年(1755)には573人いたという。
- 山口右兵衛(やまぐちうべえ):暦師(れきし:暦を作った人)。
副題(年)
解説
伊勢暦の冒頭、暦首(れきしゅ)には、その年に関する記載があります。
現代のカレンダーと書かれていることが全く異なっているので、くずし字が読めても知識がないと意味がわからないと思います。
然しながら暦本(れきほん:暦に関する書物)に書かれていることは決まっているので、ルールさえ覚えれば見た目ほど難しくありません。また暦本を解読することで、江戸時代の人々がどれほど五行とか占い中心の生活を送っていたか直観できるはずです。
それでは史料青枠を解読してみましょう。冒頭は出版地と暦師。史料は地方暦の一で、出版地が伊勢なので伊勢暦。二行目が最重要箇所で、ここを見れば"何年の暦か"がわかります。読みづらかった方は日付の解読も併せてご参考ください。
参考文献
- 伊東和彦「第三章 暦の内容」『暦を知る事典』(東京堂出版、2006年)86-87頁。岡田芳朗「暦を読む」196頁の伊勢暦(文政十年)史料の暦師も「山口右兵衛」だが、203頁解読文に「山口右衛門」とあり、誤植であろう。
- 「度会郡」『角川日本地名大辞典24 三重県』(角川書店、1983年)1129-1133頁